中心テーマは2つありました。1つ目が、自社メディアの SEO 記事制作の自動化です。当時、WordPress 上で記事を量産しているのですが、構成案の論理的なストーリー構築や、AI 特有の無機質な文章感をどう解消するかに苦慮していました。2つ目は、その自動化を進める前提となる Claude Code の環境構築です。利用ツール・ワークフロー全体を、もう一段引き上げたいという段階にいました。
「自動化を進めるには業務プロセスを細分化し、それぞれの論理展開を言語化する必要がある」というのが大前提です。つまり、いきなり1本のプロンプトに全部詰め込むのではなく、「どこからどこまでをこのステップで行うのか」を切り出していく。長屋さんには、現在の最優先課題である自社メディアの SEO 記事制作を題材に、業務の自動化と効率化の方針を共有させていただきました。
長屋 智揮 氏
文章生成において Claude の方が効果的だ、というご見解をいただきました。自分でも肌感としては感じていたところを、明確に言語化していただいた形です。
Q4.「エージェントを役割で分割する」という考え方は、どのように受け止められましたか?
菅澤 孝平
弊社の運営サイトで実施している自動化手法をご紹介しました。やっていることはシンプルで、競合他社の記事を分析し、それ以上の独自性や視覚的要素を加えた1.5倍の品質を目指すプロンプト設定。そして、役割ごとにエージェントを分割します。調査/文字起こし/文章整形/HTML・CSS 修正/監査といった粒度で、それぞれに別の役割を持ったエージェントを動かす。1つの AI に全工程を任せると品質が落ちますが、役割を細分化すると安定して伸びていきます。
これは大きな学びでした。私自身、単一の AI に全工程を任せようとしていたところがあったので、役割ごとにエージェントを切るアプローチ自体が、まだ自分の頭の中にありませんでした。セッションを受けたあとは、自社の SEO 記事制作の業務工程をさらに詳細に言語化して、役割ごとのワークフローに落とし込んでいくことが、次のステップとして明確になりました。
私の場合、提案資料はクライアントの議事録を Claude Code に読ませて、Google ドキュメントで構成案を作って、Codex に渡して PowerPoint を1枚ずつ生成する、という流れで動かしています。仕組みとしては成立しているのですが、毎回のリソース消費と精神的な負担が大きくて、もう一段軽くしたい。そして、その仕組みを自分以外のメンバーにも展開していきたい、というのも相談したかった軸の1つでした。
菅澤 孝平
単発でクオリティを出すなら、実は Claude のチャットで一気通貫に作る方が早いケースもあります。一方で「同じ品質で量産」する場合は、トンマナ・テンプレート・Confidential の配置位置まで先に細かく定義して、AI 出力をブレないようにしておく必要がある。「単発か量産か」でフローを切り分ける、というのが資料制作の出発点です。
これまでに、キーワード選定、競合分析、提案資料の構成設計など、複数の AI スキルを作ってきました。MCP も組み合わせて精度の高いアウトプットを出せる状態にはなっているのですが、Claude Code や Cursor をそのまま社内メンバーや業務委託パートナーに渡してしまうと、習得難易度の高さも、情報漏洩リスクも、現実的なハードルになります。展開したい気持ちと、現実の制約の間で止まっていたのが正直なところでした。
菅澤 孝平
前提として、一般メンバーに Claude Code を直接触らせるのは推奨していません。理由は2つあり、操作の習得難易度と情報漏洩リスクです。そしてもっと本質的に、「長屋さんが依頼しないと動かない」状態は、自動化ではなく属人化です。スキルを外部にシェアリングしていくには、入口のインターフェースを切り出す必要があります。
菅澤 孝平
具体的には、Slack のような「メンバーが普段使っているインターフェース」をトリガーにして、裏側で Claude Code が動く形に設計します。指定のチャンネルにファイルが投稿された瞬間、AI が受け取って処理し、結果を返します。メンバーから見れば「Slack で頼んだら出てきた」だけで、Claude Code の存在を意識する必要はありません。これが組織展開の現実解だと考えています。
FIGURE 03
メンバーから見えるのは Slack だけ。Claude Code はその裏側で動く
メンバーは Slack のチャンネルに投げるだけ。裏で Claude Code が動いていることを知らなくてよい状態を設計する。
長屋 智揮 氏
インターフェースだけメンバーに開いて、Claude Code 側の管理は自分が握る、という構造ですね。「メンバーに使ってもらう」前提で考えていたものが、「メンバーが普段使う場所に AI を置きにいく」という前提に置き換わる。発想が裏返ります。
長屋 智揮 氏
人によっては、そもそも AI を使うインセンティブが必ずしもあるわけではありません。「AI を使うことによって自分たちにどんなメリットがあるのか」という点へのアプローチは、なかなか難しいものです。でも、業務の中に組み込まれていれば、本人が意識しなくても自然に使われている状態が作れる。「AI を使う」ではなく「業務がいつのまにか AI で動いている」状態。これが本来あるべき姿だと、今日の話を聞いて整理できました。
私は普段から AI を相当使い倒している方だと思っていました。Claude Code も Codex も日常的に触っていて、MCP もそれなりに組み込んでいる。だから AI鬼管理を受ける前は、正直、「使い方を改めて教わる」という構えではありませんでした。
長屋 智揮 氏
それでも、「エージェントを役割で分割する」「単発と量産でフローを切り分ける」「『メンバーに Claude Code などの AI ツールを使ってもらう』発想を『メンバーが普段使う場所に置きにいく』に反転させる」「Slack を業務のハブとして使い切る」といった整理が、自分の中で一気に進みました。頭の中の「業務と AI の関係図」がガラッと書き換わった感覚があります。
あと、菅澤さんの回答が「業務を回している側の人の言葉」だったのも印象的でした。「技術的にこう書けば動きます」という話ではなく、「組織のどこに AI を置くか」「現場が動くインセンティブをどう設計するか」「最初の一手をどこから始めるか」という、経営目線の答えが返ってきました。これは、菅澤さんご自身が経営者として同じ問題を毎日解いているからこそだと思います。