【2026年最新】介護のAI活用を全網羅|見守り機器より先に着手すべき「記録・請求・シフト」の効率化と要配慮個人情報の扱いまで解説
介護業界のAI活用を調べると、見守りセンサー、介護ロボット、移乗支援機器——といった話が並びます。どれも有用ですが、導入には数百万円規模の投資が必要で、補助金の申請から設置まで半年以上かかることも珍しくありません。
一方で、現場の職員が最も負担に感じているのは「記録を書く時間」であることが多くあります。ケアの合間に記録を書き、残業して書き上げ、それでも書ききれない——この状況は、機器を導入しても解決しません。
この記事では、介護業界のAI活用を5領域に整理したうえで、機器導入より先に着手できる「記録・請求・シフト」の効率化を実務手順として示します。あわせて、他の記事がほとんど触れていない要配慮個人情報の扱いとケアプランとAIの線引きも扱います。
01 CONCLUSION FIRST 結論:機器の導入より先に「記録と事務」から着手する 投資規模と、効果が出るまでの時間がまったく違う
最初に結論を示します。介護事業所がAI活用を始めるなら、見守り機器や介護ロボットではなく、記録と事務業務から着手するのが合理的です。
| 比較軸 | 機器の導入(見守り・ロボット等) | 記録・事務のAI活用 |
|---|---|---|
| 初期投資 | 数百万円〜 | 月数千円〜 |
| 準備期間 | 半年〜1年(補助金申請・設置含む) | 数週間 |
| 対象 | 現場のケア業務 | 記録・請求・シフト作成 |
| 効果が出るまで | 導入後さらに数か月 | 1か月で実感できる |
| 職員への負担 | 操作習得が必要 | 記録を書く負担が直接減る |
| 小規模事業所での実現性 | △ 補助金頼み | ◎ ほぼどの事業所でも |
もちろん見守り機器には大きな価値があります。夜勤時の巡回負担を減らし、事故を防ぐ効果は機器でなければ実現できません。ただしそれは「次の段階」です。
1-1. なぜ記録から着手するのか
理由は3つあります。
記録業務が軽くなれば、その時間を直接ケアに使えます。これは介護の質そのものに影響する効果です。
介護記録は介護報酬の請求根拠であり、事故発生時には法的な証拠にもなります。効率化にあたっては、記載すべき内容が漏れない設計にしてください。AIが下書きを作る場合も、内容の確認は必ず職員が行います。
02 FIVE AREAS 介護業界でAIが活用される5つの領域 まず全体像と、投資規模の違いを押さえる
| 領域 | 主な用途 | 投資規模 | 着手のしやすさ |
|---|---|---|---|
| ① 記録業務 | 介護記録の下書き、音声からの文字起こし | 月数千円〜 | ◎ |
| ② 事務・請求業務 | 介護報酬請求の準備、書類作成、集計 | 月数千円〜 | ◎ |
| ③ シフト作成 | 勤務表の作成、調整案の提示 | 月数千円〜 | ○ |
| ④ 見守り・センサー | 離床検知、体動の把握、夜間巡回の削減 | 数百万円〜 | △ |
| ⑤ ケアプラン支援 | アセスメント整理、プラン案の提示 | 要検討 | △ |
①②③が投資も小さく着手しやすい領域です。いずれも「文書を作る」「データを集計する」という事務作業で、機器の設置は不要です。
2-1. ①記録業務|最も負担が大きい
介護記録は、利用者ごと・日ごとに発生します。利用者30名の施設なら、1日30件以上の記録が生まれます。しかも記録はケアの合間か、業務終了後に書くことになります。
2-2. ②事務・請求業務|見落とされがちな負担
介護報酬の請求業務、加算要件の確認、実地指導への備え——事務職員が担う業務量は、事業所の規模に比例して増えます。小規模事業所では、管理者が兼務していることも多くあります。
2-3. ③シフト作成|制約条件が多く時間がかかる
勤務形態、資格要件、職員の希望、人員配置基準——考慮すべき制約が多く、作成に数時間かかる業務です。しかも変更が頻繁に発生します。
2-4. ④見守り・センサー|効果は大きいが投資も大きい
夜間の巡回負担の軽減、離床事故の防止——効果は明確ですが、機器の購入と設置に数百万円規模の投資が必要です。補助金を活用するにしても、申請から導入まで時間がかかります。
2-5. ⑤ケアプラン支援|責任の所在に注意
アセスメント情報の整理やプラン案の提示はAIで補助できますが、ケアプランの作成責任はケアマネジャーにあります。詳しくはセクション6で扱います。
03 CARE RECORDS 介護記録の効率化|最初に着手すべき業務 職員の負担を最も直接的に減らせる領域
3-1. 記録業務の何に時間がかかっているか
| 作業 | 負担の内容 | AIで削れるか |
|---|---|---|
| 文章を考える | 同じような内容を毎回書き直している | ◎ 下書き生成で大幅短縮 |
| 手書きからの転記 | 紙のメモをシステムに入力 | ◎ 写真から読み取り可能 |
| 専門用語・表現の統一 | 職員によって書き方がバラバラ | ◎ 表現の統一が可能 |
| 記載漏れの確認 | 必要項目が書けているかのチェック | ○ 漏れの検出が可能 |
| ケアの実施そのもの | —— | × 人が行う |
特に効果が大きいのが「文章を考える時間」です。「本日も変わりなくお過ごしになりました」といった定型的な記録を、毎回ゼロから書いている職員は少なくありません。
3-2. 実際の進め方
| 工程 | 担当 | 内容 |
|---|---|---|
| 1. ケアの実施 | 職員 | 実際の介助・観察 |
| 2. メモ・音声の記録 | 職員 | 要点をメモ、または音声で残す |
| 3. 記録文の下書き | AI | メモや音声から記録文を生成 |
| 4. 内容の確認・修正 | 職員 | 事実確認、必要な追記 |
| 5. システムへの入力 | 職員またはAI | 確認済みの内容を登録 |
ポイントは工程2です。ケアの直後に要点だけメモしておけば、後からまとめて記録文を作れます。「あとで思い出しながら書く」より、記憶が新しいうちにメモを取るほうが正確です。
ケアの直後にスマートフォンで30秒ほど音声メモを残すだけなら、手書きより負担が小さくなります。その音声から記録文の下書きを作れば、記録にかかる時間は大きく変わります。ただし利用者の氏名を含む音声データの扱いには注意が必要です(セクション6参照)。
3-3. 記録で必ず守るべきこと
介護記録は介護報酬請求の根拠であり、実地指導でも確認されます。また事故が発生した際には法的な証拠になります。効率化にあたっては次の3点を守ってください。①実際に行ったことだけを記録する(AIが推測で補完した内容を残さない)②必要な記載項目が漏れていないか確認する ③確認した職員が誰かを明確にする
AIが生成した文章をそのまま登録すると、実際には行っていないケアが記録に残るおそれがあります。工程4の確認を省略してはいけません。
3-4. サービス種別ごとの記録の違い
記録の負担は、サービス種別によっても変わります。
| サービス種別 | 記録の特徴 | AIが効きやすい部分 |
|---|---|---|
| 特養・老健(入所) | 利用者ごとに毎日発生。件数が最も多い | 日々の状態記録の下書き |
| デイサービス(通所) | 当日の様子と送迎記録。件数が多い | 活動内容・様子の記録 |
| 訪問介護 | 訪問ごとに記録。移動中に書けない | 音声メモからの記録作成 |
| ケアマネジャー | モニタリング記録、支援経過 | 経過記録の整理・要約 |
| グループホーム | 少人数だが個別性が高い | 個別の状態変化の記録 |
特に訪問介護では、移動中に記録を書けないため、訪問後にまとめて書くことになります。訪問直後に音声メモを残し、後から記録文を作る運用にすると、負担が大きく変わります。
3-5. 記録が変わると何が変わるか
| 変化 | 内容 |
|---|---|
| 残業が減る | 記録のために残っていた時間が減る |
| ケアの時間が増える | 記録に取られていた時間を利用者に使える |
| 記録の質が均一になる | 職員による書き方のばらつきが減る |
| 申し送りが正確になる | 記録が読みやすくなり、情報共有の質が上がる |
4つ目は見落とされがちですが重要です。記録が読みやすくなると、次のシフトの職員への申し送りが正確になります。これは事故防止にもつながります。
04 ADMIN WORK 事務・請求業務の効率化 現場の記録と並んで負担が大きい、事務所側の業務
介護事業所の事務業務は、介護報酬請求を中心に、書類作成と確認作業が積み重なる構造です。小規模事業所では管理者が兼務していることも多く、負担が集中しています。
| 業務 | AIに任せる部分 | 人が担う部分 |
|---|---|---|
| 請求データの確認 | 記録との突き合わせ、不整合の抽出 | 内容の最終確認、修正判断 |
| 加算要件のチェック | 要件と実績の照合、不足の検出 | 算定可否の判断 |
| 実地指導の準備 | 必要書類のリスト作成、不備の検出 | 書類の整備、説明 |
| 各種届出書類の作成 | 定型部分の下書き | 内容確認、提出 |
| 職員研修の資料作成 | 構成案と本文の下書き | 内容の確認、実施 |
| 利用者・家族への案内文 | 文面の下書き | 個別事情の反映、送付判断 |
4-1. 加算要件のチェックが効きやすい
介護報酬には多数の加算があり、それぞれ算定要件が細かく定められています。要件を満たしているのに算定していない(取りこぼし)、逆に要件を満たさず算定してしまう(返還リスク)——どちらも起こり得ます。
要件と実績の照合をAIで補助すれば、取りこぼしと過誤請求の両方を減らせます。ただし最終的な算定可否の判断は人が行ってください。
介護報酬は定期的に改定され、加算の要件も変わります。AIが学習している情報が古い可能性があるため、要件の確認は必ず最新の告示・通知で行ってください。AIの用途は「照合作業の効率化」であり、「制度内容の判断」ではありません。
4-2. 実地指導の準備
実地指導では多数の書類の提示が求められます。「どの書類が必要か」「揃っているか」の確認作業にAIを使えば、準備の負担が下がります。
05 SHIFT シフト作成の効率化 制約条件が多く、作成にも変更にも時間がかかる業務
介護のシフト作成は、考慮すべき制約が多いのが特徴です。
| 作業 | AIに任せる部分 | 人が担う部分 |
|---|---|---|
| 初期案の作成 | 制約条件を満たす組み合わせの提示 | 最終的な配置の判断 |
| 変更対応 | 欠勤時の代替案の提示 | 職員への依頼、調整 |
| 労働時間の集計 | 時間数の計算、上限超過の検出 | 対応の判断 |
| 希望の集約 | 希望休の一覧化、重複の検出 | 調整の判断 |
シフト作成でAIが有効なのは「制約を満たす案を素早く出す」ところまでです。誰にどの勤務を依頼するかは、職員との関係性や事情を踏まえた判断が必要なため、人が行います。
シフトは作成より変更対応のほうが負担が大きいことがあります。急な欠勤が出るたびに、誰に依頼できるかを探し直すためです。制約条件を整理しておけば、代替案の抽出は速くなります。
06 LEGAL LINE 要配慮個人情報の扱いと、ケアプランの線引き 介護業界で最も重要な、しかしあまり語られない論点
介護事業所が扱う情報は、個人情報のなかでも特に慎重な取り扱いが求められるものです。AI活用を検討する前に、この点を押さえておく必要があります。
6-1. 要配慮個人情報とは
📚 用語解説
要配慮個人情報:個人情報保護法で定められた、特に慎重な取り扱いが求められる個人情報。人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実のほか、心身の機能の障害、健康診断等の結果などが含まれる。取得には原則として本人の同意が必要とされ、オプトアウトによる第三者提供は認められていない。
介護事業所が日常的に扱う情報の多くが、これに該当します。
要配慮個人情報を含むデータをAIに入力する場合、個人情報保護法上の取り扱いと、利用者・家族への説明内容(同意の範囲)を確認する必要があります。実務的には、氏名・生年月日・住所といった個人を特定できる情報をマスキングしてから入力する運用が現実的です。「Aさん・80代女性・要介護3」といった形であれば、記録の整理には十分使えます。
6-2. 確認すべき4項目
これらを整理せずに使い始めると、後から問題が発覚したときに対応が難しくなります。導入前に必ず確認してください。所属する団体がガイドラインを出している場合は、それも参照します。
6-3. ケアプランとAIの線引き
ケアプランの作成支援にAIを使う動きがありますが、責任の所在は明確にしておく必要があります。
| 工程 | AIに任せられるか | 理由 |
|---|---|---|
| アセスメント情報の整理 | ○ 可能 | 情報の整理は作業 |
| 課題の候補の抽出 | △ 補助として | 見落とし防止には有効 |
| プラン案の提示 | △ 補助として | あくまで案。採否は人が判断 |
| ケアプランの決定 | × 不可 | ケアマネジャーの判断と責任 |
| 利用者・家族への説明 | × 不可 | 対人業務、同意取得を伴う |
| サービス担当者会議 | × 不可 | 多職種での協議 |
AIは「見落としを防ぐ補助」として使うのが適切です。過去の類似ケースの提示や、アセスメント情報の整理は有効ですが、プランの決定はケアマネジャーが行い、その責任も人が負います。
6-4. 記録の改ざんと受け取られない運用にする
介護記録でAIを使う際の最大の注意点です。AIは文脈から推測して自然な文章を作りますが、実際には行っていないケアを補完してしまうことがあります。これが記録に残ると、実地指導や事故時に「事実と異なる記録」と判断されるおそれがあります。必ず職員が内容を確認し、実際に行ったことだけを記録として残してください。
運用としては、「AIが下書きを作り、職員が確認して確定する」という流れを明文化し、確認者が誰かを記録に残す形が安全です。
07 PROS AND CONS 介護事業所がAIを導入するメリットと課題 両面を正面から扱う
7-1. メリット5つ
特に1つ目が重要です。記録の時間が減れば、その分をケアに使えます。効率化がそのままサービスの質につながる、という点は介護業界に特有の効果です。
7-2. 課題4つと対処
①職員のIT習熟度にばらつきがある
介護現場では、ITに不慣れな職員も少なくありません。対処:操作が複雑なものを避け、音声入力など負担の小さい形から始めます。前向きな職員1名で試して、効果を示してから広げてください。
②要配慮個人情報の扱いが難しい
セクション6で扱った論点です。対処:個人が特定できる情報をマスキングする運用を徹底します。導入前に4項目(説明内容・学習利用の可否・保存場所・再委託)を確認してください。
③記録の正確性が損なわれる懸念
対処:「AIが下書き、職員が確認」の流れを明文化し、確認工程を省略しないルールにします。
④効果が見えず継続の判断ができない
対処:着手前に記録にかかっている時間を測ります。「1件15分が5分になった」という数字があれば、継続の判断も職員への説明もできます。
| 課題 | 対処 |
|---|---|
| 職員のIT習熟度のばらつき | 音声入力など負担の小さい形から、1名で試す |
| 要配慮個人情報の扱い | マスキングの徹底と、導入前の4項目確認 |
| 記録の正確性への懸念 | 確認工程の明文化、省略しない運用 |
| 効果が見えない | 着手前に記録時間を測っておく |
08 HOW TO START 導入の5ステップと規模別の進め方 1か月で効果が見える進め方
8-1. STEP1〜2:記録業務から始める
「誰が・何の業務に・月何時間かけているか」を書き出し、記録業務にかかっている時間を把握します。多くの事業所では、記録が最も大きな負担になっています。
8-2. STEP3:ルールを決める
8-3. STEP4〜5:1名で試して測る
前向きな職員1名で1か月試します。全職員に同時展開すると、混乱が起きたときに原因を特定できません。
8-4. 規模別の進め方
| 事業所規模 | 最初の一歩 | 推進体制 | 最大の障壁 |
|---|---|---|---|
| 1事業所・10名以下 | 管理者が記録業務で試す | 管理者が推進 | ITに不慣れな職員への展開 |
| 1事業所・10〜30名 | 1ユニット・1名で試す | 兼任の推進担当 | 現場の理解を得ること |
| 複数事業所 | 1事業所で成功例を作る | 本部に推進担当 | 個人情報の扱いルールの整備 |
「スマートフォンを日常的に使っていて、業務改善に前向きな職員」を選んでください。ITに詳しい必要はありません。効果を実感した職員が「これは楽になる」と言うことが、他の職員への最も有効な説明になります。
8-5. 効果測定
| 測る項目 | 測り方 | 目安 |
|---|---|---|
| 記録にかかる時間 | 1件あたりの所要時間(導入前後) | 3割以上減れば成功 |
| 残業時間 | 記録のための残業時間 | 減っているか |
| 記載漏れの件数 | 必要項目の漏れが指摘された件数 | 増えていないか |
3つ目が重要です。時間が減っても記載漏れが増えては本末転倒です。速さと正確性を両方測ってください。
09 BUILD OR BUY 自社で回すか、事務作業を外部に預けるか 介護業界では「個人情報の扱い」が判断を分ける
📚 用語解説
AI BPO:AIエージェントを実処理の主体に据えた業務委託の形態。従来のBPOが「人手を外部に確保する」モデルだったのに対し、AI BPOは「処理の仕組みを外部に作ってもらい、人は例外対応と承認に回る」モデルになる。処理量が増えても費用が比例しにくい点が特徴。
| 業務 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 介護記録 | 自社で回す | 要配慮個人情報を含み、外部に出しにくい |
| ケアプラン関連 | 自社で回す | ケアマネジャーの責任業務 |
| シフト作成 | 自社で回す | 職員の個別事情を踏まえる必要がある |
| 経理・給与計算 | 委託しやすい | 介護に固有の情報が少ない |
| 請求データの集計・確認 | 要検討 | 個人情報の扱い次第 |
| 研修資料・案内文の作成 | 委託しやすい | 個人情報を含まない |
介護事業所では要配慮個人情報を扱う業務が多いため、全面的な委託より業務ごとの切り分けが現実的です。現場に近い業務は自社で、経理などの管理業務は委託という構成が実務的になります。
バックオフィス全体の効率化については、バックオフィスの記事で6部門別に整理しています。
10 CONCLUSION まとめ|介護事業所がAI活用を始める手順 要点を、実行の順番に沿って整理する
介護業界のAI活用は、見守り機器や介護ロボットの話が中心に語られます。しかし職員の負担を最も直接的に減らせるのは、記録と事務業務です。しかも月数千円から始められ、1か月で効果が見えます。
一方で、要配慮個人情報の扱いとケアプランの責任の所在は、介護業界で必ず押さえるべき論点です。個人が特定できる情報はマスキングし、「AIが下書き、職員が確認」の流れを崩さない——この2点を守れば、法令とサービス品質を保ちながら効率化できます。
「記録のどこまでAIに任せてよいか」「利用者の情報をどこまで扱ってよいか」の線引きは、一般論では決まらず、事業所の運用と説明内容によって変わります。
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よくある質問
Q. 介護業界でAIはどんな業務に活用できますか?
A. 大きく5領域あります。①記録業務(介護記録の下書き、音声からの文字起こし)②事務・請求業務(介護報酬請求の準備、加算要件の照合)③シフト作成 ④見守り・センサー(離床検知、夜間巡回の削減)⑤ケアプラン支援(アセスメント整理)です。④は数百万円規模の投資が必要ですが、①②③は月数千円から始められます。
Q. 何から始めるべきですか?
A. 記録業務から着手するのが合理的です。理由は3つで、①職員の負担が最も大きい業務のひとつであること ②毎日必ず発生し件数が多いこと ③投資が小さくすぐ試せること、です。記録の時間が減れば、その分をケアに使えるため、効率化がそのままサービスの質につながります。
Q. 介護記録をAIで作って問題ないですか?
A. 下書きの作成までは有効ですが、職員による内容確認は必ず必要です。介護記録は介護報酬請求の根拠であり、事故発生時には法的な証拠にもなります。AIは文脈から推測して自然な文章を作るため、実際には行っていないケアを補完してしまうことがあります。これが記録に残ると「事実と異なる記録」と判断されるおそれがあるため、実際に行ったことだけを記録として残してください。
Q. 利用者の情報をAIに入力してもよいのでしょうか?
A. 介護事業所が扱う情報の多くは、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」(病歴、心身の機能の障害、健康診断の結果など)に該当します。実務的には、氏名・生年月日・住所といった個人を特定できる情報をマスキングしてから入力する運用が現実的です。「Aさん・80代女性・要介護3」といった形であれば記録の整理には十分使えます。あわせて、利用者・家族への説明内容(同意の範囲)、学習利用の可否、データの保存場所、再委託の有無を導入前に確認してください。
Q. ケアプランの作成をAIに任せられますか?
A. アセスメント情報の整理や課題候補の抽出、プラン案の提示までは補助として使えますが、ケアプランの決定はケアマネジャーが行い、その責任も人が負います。利用者・家族への説明やサービス担当者会議も人が担う領域です。AIは「見落としを防ぐ補助」として使うのが適切です。
Q. ITに不慣れな職員が多いのですが導入できますか?
A. できます。操作が複雑なものを避け、音声入力のように負担の小さい形から始めてください。ケアの直後にスマートフォンで30秒ほど音声メモを残すだけなら、手書きより負担が小さくなります。まず「スマートフォンを日常的に使っていて、業務改善に前向きな職員」1名で試し、効果を実感してもらってから広げるのが確実です。
Q. 介護報酬の加算要件のチェックにAIは使えますか?
A. 要件と実績の照合を補助する形で使えます。算定できるのに算定していない取りこぼしや、要件を満たさない算定を減らせます。ただし介護報酬は定期的に改定され加算要件も変わるため、AIが学習している情報が古い可能性があります。要件の確認は必ず最新の告示・通知で行い、最終的な算定可否の判断は人が行ってください。
Q. 効果はどう測ればよいですか?
A. 3つの項目を測ります。①記録1件あたりの所要時間(導入前後で比較)②記録のための残業時間 ③必要項目の記載漏れが指摘された件数、です。3つ目が重要で、時間が減っても記載漏れが増えては本末転倒です。速さと正確性を両方測ることで、正しく判断できます。3か月後に記録時間が3割以上減り、記載漏れが増えていなければ成功と判断できます。
Q. 訪問介護でもAIは使えますか?
A. 訪問介護は特に効果が出やすいサービス種別です。移動中に記録を書けないため、訪問後にまとめて書くことになり、記憶が曖昧なまま書くことも少なくありません。訪問直後にスマートフォンで30秒ほど音声メモを残し、そこから記録文の下書きを作る運用にすると、負担が大きく変わります。記憶が新しいうちにメモを取るため、記録の正確性も上がります。ただし利用者の氏名を含む音声データの扱いには注意が必要です。
Q. 見守りセンサーとAI活用はどちらを先にすべきですか?
A. 記録・事務のAI活用が先です。見守り機器は数百万円規模の投資が必要で、補助金の申請から設置まで半年以上かかることもあります。一方、記録のAI活用は月数千円から始められ、1か月で効果が見えます。また、記録業務でAIの使い方に慣れておくと、機器を導入した際のデータ活用もスムーズになります。ただし夜勤の巡回負担が深刻な場合など、機器でなければ解決しない課題がある場合は並行して検討してください。
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