【飲食店】仕込み量の予測をClaude Code/Codexで自動化する方法
「明日のランチ、ハンバーグは何食出るだろう」。営業を終えた夜、料理長が予約台帳と冷蔵庫の中身を見比べながら、紙の仕込み表に数字を書き込んでいきます。多めに仕込めば翌日の夜に捨てる食材が増え、少なめにすれば看板メニューが昼過ぎに売り切れる。仕込み量の判断は、飲食店の利益とお客様の満足を毎日左右しているのに、多くの店で料理長の頭の中にしかありません。
結論から言うと、仕込み量は「メニューごとの予測出数 × 1食あたりの使用量 − 使える作り置き」で決まり、用意する食材の量はそれを歩留まりで割り戻して出します。このうち予測出数は、予約・曜日・天気・過去の出数というデータから機械的に出せる部分です。一方、地域の行事や宴会の中身を読んで量を足し引きするのは、人にしかできない部分です。
この記事では、仕込み量の決め方の基本(計算式・歩留まり・作り置きできる時間・衛生のルール)を実務目線で整理します。そのうえで、前日17時になったら自動で翌日の出数を予測し、品目と量の入った仕込み表ができあがる仕組みをClaude Code/Codexで作る方法を、AI鬼管理(運営: 株式会社GENAI)が解説します。予約台帳・売上日報・請求書の照合など、飲食店のほかの業務の自動化は飲食店をClaude Code/Codexで自動化した事例11選にまとめています。
この記事でわかること
01 THE PROBLEM 飲食店の仕込み量で起きていること 多すぎれば廃棄、少なすぎれば品切れ。どちらも利益を削っている
仕込みは、営業中の提供スピードと料理の品質を支える土台です。ソースを取る、肉を掃除して成形する、野菜を切りそろえる。営業前にここまで済ませておくから、ピークタイムでも注文から短い時間で料理を出せます。その一方で、仕込みは作りすぎても足りなくても損をする、難しい意思決定でもあります。
1-1. 仕込み量が「料理長の頭の中」にある
多くの店では、仕込み量は料理長やベテラン社員の経験と勘で決まっています。勘そのものは侮れません。「雨の金曜は夜が伸びない」「近くの会社の給料日はランチが増える」といった傾向を、長年の経験で体が覚えているからです。問題は、その判断の根拠がどこにも書かれていないことです。そのために、次のようなことが起きます。
📚 用語解説
出数:一定期間に、そのメニューが何食注文されたか(提供されたか)を表す飲食店の言葉。売上金額ではなく「食数」で見るため、仕込み量や発注量の計算に直結する。POSレジのメニュー別集計で確認できることが多い。
1-2. 多すぎても少なすぎても損をする
仕込みすぎの損失は分かりやすく、使い切れなかった食材の原価がそのまま捨てられます。ただし損失は原価だけではありません。余分な仕込みに使ったスタッフの時間、ごみ処理の手間、冷蔵庫の場所まで、見えにくいコストが重なります。
仕込み不足の損失は、さらに見えにくいものです。看板メニューが品切れになれば、その分の売上が消えるだけでなく、「食べたかったのに」というお客様の体験が残ります。廃棄は記録に残りますが、品切れの損失はほとんど記録に残りません。そのため、勘で仕込み量を決めている店ほど「品切れが怖いから多めに仕込み、廃棄が増える」方向に傾きがちです。
| 仕込みすぎ | 仕込み不足 | |
|---|---|---|
| 直接の損失 | 使い切れない食材の原価 | 売れたはずの売上(機会損失) |
| 見えにくい損失 | 余分な仕込み時間・廃棄の処理・冷蔵庫の場所 | お客様の失望・再来店の減少・ホールへのクレーム |
| 記録への残り方 | 廃棄量として記録できる | ほとんど記録されない |
| 起きやすい店 | 品切れを避けたい店・作り置きが多い店 | 食材の保存がきかない店・仕込みの人手が足りない店 |
1-3. 外食産業の食品ロスは年間70万トン(2024年度推計)
仕込み量の問題は、個々の店の利益だけの話ではありません。農林水産省の推計では、2024年度の事業系食品ロス量は237万トンで、そのうち外食産業は70万トンでした。政府は事業系食品ロスを2030年度までに2000年度比で60%削減する目標を掲げており、2024年度の時点では2000年度比で57%の削減となっています。
飲食店の食品ロスには、食べ残し、調理くず、期限切れなどいくつもの原因があります。その中で、来店客数や注文数の見込み違いによる仕込みすぎは、店側の工夫で最も減らしやすい部分です。廃棄を在庫や発注の面から減らしたい場合は、飲食店の食品ロスを減らす方法|AI在庫管理を自作する手順も参考になります。
1-4. 店舗が増えると「勘」が回らなくなる
1店舗なら、料理長が毎晩すべての仕込みを見ることもできます。しかし2店舗、3店舗と増えると、全店の予約と冷蔵庫を1人で確認して仕込み表を書くのは難しくなります。店ごとに判断する人を置けば、今度は判断の基準がばらつきます。こうして店舗が増えるほど、廃棄と品切れの店舗間の差が広がっていきます。
この流れで一番の問題は、最後の「理由が残らない」です。予測と実績のズレが記録されないので、翌日も同じ外し方をします。仕組み化の目的は、この輪をデータでつなぎ直すことにあります。
02 BASICS & RULES 仕込み量の決め方の基本と押さえるべきルール 計算式・歩留まり・作り置きの時間・衛生と食品ロスのルールを押さえる
ここからは実務の話です。仕込み量を仕組みで決めるにしても、人が決めるにしても、土台になる考え方は同じです。
2-1. 仕込み量の基本式
仕込み量は、次の式で考えるのが基本です。
仕込み量 = 予測出数 × 1食あたりの使用量 − 使える作り置きの残り
用意する食材の量(下処理前)= 仕込みに使う食材の量 ÷ 歩留まり
(必要に応じて、品切れを防ぐための上乗せ分を足す)
ハンバーグを例に、計算の流れを表にしました。1食あたりパテ(成形した生地)を150g、パテに入れる玉ねぎのみじん切りを30g使い、玉ねぎの歩留まりを90%とした場合です。
| 計算の段階 | 中身 | 例(ハンバーグ) |
|---|---|---|
| ① 予測出数 | 明日、そのメニューが何食出るか | 40食 |
| ② 必要な量 | 予測出数 × 1食あたりの使用量 | 40食 × 150g = 6.0kg |
| ③ 使える残り | 作り置きのうち、店の衛生ルール上まだ使える量 | 1.2kg(8食分) |
| ④ 今日の仕込み量 | ② − ③ | 4.8kg(32食分) |
| ⑤ 下処理前の量 | ④に使う食材を歩留まりで割り戻す | 玉ねぎ 32食 × 30g = 960g、960g ÷ 90% ≒ 1.07kg |
この計算で人が迷うのは、①の予測出数だけです。②から⑤は決まった計算なので、一度ルールを決めてしまえば、毎日同じ手順で機械的に出せます。仕込み量の自動化は、まさにこの性質を利用します。
2-2. 仕込みに必要なのは「売上予測」ではなく「出数予測」
飲食店の予測と聞くと、客席数・回転数・客単価から売上を見積もる「売上予測」を思い浮かべる方が多いでしょう。売上予測は人員計画や資金繰りに役立ちますが、仕込みに必要なのは金額ではなくどのメニューが何食出るかという出数です。売上が同じ日でも、ハンバーグがよく出る日とパスタがよく出る日では、仕込む中身がまったく違います。
出数予測は、「客数の予測」×「メニューの出数比率(何人に1人がそのメニューを頼むか)」に分けて考えると扱いやすくなります。客数は予約や天気で大きく動きますが、出数比率はメニュー改定や季節の変わり目がなければ大きくは動きにくいからです。この分け方は、データが少ない店ほど効いてきます(第6章で詳しく説明します)。
📚 用語解説
需要予測:過去の実績や曜日・天気・予約などのデータから、将来どれくらい売れるか(注文されるか)を見積もること。飲食店では客数・売上・メニュー別の出数などが対象になる。天気予報と同じく、外れることを前提に外れ方を記録し、少しずつ精度を上げていく考え方が大切。
もう一つ大事なのが、予測と目標を混ぜないことです。「明日はハンバーグを50食売りたい」は目標であって予測ではありません。売りたい数を予測に混ぜると、仕込みすぎの原因になります。販促で出数を伸ばしたいときは、予測とは別に「販促による上乗せ」として記録しておくと、あとで販促の効果も検証できます。
2-3. 歩留まりは「自店で測った数字」を使う
📚 用語解説
歩留まり(ぶどまり):仕入れた食材のうち、皮・芯・骨・筋などを取り除いた後に、実際に料理に使える部分の割合。1kgの食材から850gが使えれば歩留まりは85%。逆に、取り除く部分の割合を廃棄率と呼ぶ。仕込み量を下処理前の量に割り戻すときに必要になる。
歩留まりの参考値としては、文部科学省の「日本食品標準成分表」に食品ごとの廃棄率が載っています。成分表の廃棄率は、通常の食習慣で廃棄される部分を、食品全体または購入した形に対する重さの割合で示したものです。ただし実際の歩留まりは、仕入れの規格、切り方、料理の用途、季節による品質の違いで変わります。仕込み量の計算に使うなら、自店で何回か実測した数字を使うのが確実です。
同じ食材を3回ほど、下処理の前と後で量ります。平均を取って仕込み品マスタ(第7章)に書き込み、仕入れ先や規格を変えたときに測り直します。肉や魚は掃除の仕方で差が出やすいので、担当者が変わったタイミングでも一度測っておくと安心です。
2-4. 作り置きできる時間と衛生のルール
仕込み量を決めるときに見落とされがちなのが、その仕込み品をいつまでに使い切る必要があるかです。作り置きできる時間が長いソースやフォンは前日にまとめて仕込めますが、カットした葉物や、衣を付けておく揚げ物の下ごしらえのように時間とともに品質が落ちるものは、当日の仕込みや営業中の追加仕込みに回す必要があります。
衛生面では、2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められています。飲食店営業は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象で、業界団体が作成し厚生労働省が公開している手引書などを参考に衛生管理計画を作り、実施状況を記録します。
📚 用語解説
HACCP(ハサップ):食中毒などの危害が起きやすい工程をあらかじめ洗い出し、加熱や保存の温度などの管理点を決めて、守れているかを記録・確認する衛生管理の手法。仕込み品の作り置きでは、冷却の速さと保存の温度・時間が主な管理点になる。
作り置きの時間と温度の目安として参考になるのが、厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」です。本来は同一メニューを1回300食以上または1日750食以上提供する施設に適用されるマニュアルですが、次のような考え方は、一般の飲食店が作り置きのルールを決めるときの目安になります。
「品切れが怖いから多めに作り置きしておく」は、廃棄を増やすだけでなく、衛生面のリスクも増やします。作り置きできる時間と保存方法は、店の衛生管理計画に沿って仕込み品ごとに決め、仕込み表には「いつまでに使い切るか」を必ず書くようにしてください。自動化する場合も、この時間はAIに推測させず、店が決めた値を使います。
2-5. 食品ロスの削減は事業者の努力義務
2019年10月1日に施行された「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」では、事業者は食品ロスの削減について積極的に取り組むよう努めるものとされています。罰則のある義務ではありませんが、仕込み量を数字で管理して廃棄を減らす取り組みは、原価の削減と同時に、社会からの要請に応えることにもつながります。
03 AUTOMATION 効率化ではなく自動化:Claude Code/Codexで仕込み予測の何を自動化するか AIに都度頼むのは効率化。きっかけが来たら勝手に走るのが自動化
📚 用語解説
Claude Code/Codex:Claude CodeはAnthropic社、CodexはOpenAI社が提供するAIエージェント。質問に答えるだけのチャットAIと違い、パソコン上のファイルを読み書きし、集計や表の作成といった作業の手順そのものを組み立てて実行できる。日本語で指示できるため、POSのデータを読み込んで仕込み表を作る、といった業務の仕組みを、プログラミングの経験がない人でも作りやすい。
3-1. 「AIに頼む」効率化と「勝手に走る」自動化の違い
最初に、この記事でいちばん伝えたい考え方を整理します。チャットAIに「明日の予約はこうだから、仕込み量を考えて」と毎晩相談するのは効率化です。考える時間は短くなりますが、人が思い立って頼まない限り何も起きません。忙しい日や料理長が休みの日には使われず、仕込み量の決め方は結局、人に戻ってしまいます。
WORKFLOW
効率化(お願いベース)— 人が起点
これに対して自動化は、決まったきっかけ(トリガー)が来たら、決まった手順が人の操作なしで走り、人は結果の確認と判断だけをする状態です。仕込み予測で言えば、「前日17時になったら、予約・天気・過去の出数を自動で集めて出数を予測し、仕込み表まで作っておく」。料理長は、できあがった仕込み表を見て、宴会や地域の行事など機械には分からない事情だけを補正します。
📚 用語解説
トリガー:仕組みを動かす「きっかけ」のこと。「毎日17時になったら」「予約が締め切られたら」「ファイルが保存されたら」など。厨房で言えば、注文が通ったら調理が始まる、の「注文が通る」にあたる。人が思い出さなくても仕事が始まるように、トリガーを決めておくのが自動化の出発点になる。
効率化と自動化の違いは、誰が仕事を始めるかです。効率化では人が始め、自動化では時計や出来事が始めます。仕込み表は毎日必ず作るものなので、人が始める方式ではいつか必ず抜けが出ます。毎日決まって発生する業務ほど、自動化の効果は大きくなります。
3-2. 仕込み予測を自動化したときの全体像
この流れのうち、人が関わるのは「料理長が補正」の1か所だけです。データを集める、予測する、仕込み表に展開する、表示する、翌日の実績と比べて記録する。これらはすべて決まった手順なので、自動化できます。
📚 用語解説
ワークフロー:仕事の流れを「きっかけ → 手順 → 判断 → 結果」の順に定義したもの。厨房の段取り表に近い。自動化では、この流れのうち機械が担う手順と人が担う判断を分けて設計し、機械の手順はトリガーで自動的に動くようにする。
3-3. Claude Code/Codexに任せる作業、人が担う作業
| 作業 | これまで | 自動化した後 |
|---|---|---|
| 予約数・コース内容の確認 | 料理長が予約台帳を見る | 予約データを自動で集計 |
| 天気・曜日の確認 | 料理長が天気予報を見て頭の中で考慮 | 翌日の天気予報・曜日・祝日を自動で取り込む |
| 過去の出数の振り返り | 記憶に頼る(記録がないことも多い) | POSの出数実績から、条件の近い日を自動で集計 |
| メニュー別の出数予測 | 料理長の経験と勘 | 決めた計算ルールで自動算出(人は結果を確認) |
| 仕込み表の作成 | 紙やエクセルに毎晩手作業で | 品目・量・使い切りの期限つきで自動作成 |
| 行事・宴会による補正 | 料理長 | 料理長(人が判断) |
| 予測と実績のズレの記録 | ほとんどしていない | 営業後に記録し、翌日以降の予測に反映 |
ポイントは、今使っているPOSレジや予約台帳、エクセルやスプレッドシートを入れ替えずに使えることです。Claude Code/Codexは、既存のデータを読み込んで、店のルールどおりに計算する手順そのものを作ります。予測の方法も「同じ曜日の直近4回の平均から始める」のように店の状況に合わせて選べるので、データがまだ少ない店でも小さく始められます。
04 MODEL CASE モデル事例:D社(洋食レストラン3店舗)の導入前と導入後 前日17時に走る仕込み予測で、廃棄と品切れを同時に減らす
ここからは、仕組みの具体的な形をモデル事例(AI鬼管理が支援を想定した仮名のケース。数値は目安)で紹介します。実在の会社の事例ではありません。洋食レストランの仕込みで起きやすい状況をもとに、仕組みの動き方と、人が判断する部分を具体的に描いています。
📍 モデル事例(AI鬼管理が支援を想定した仮名のケース。数値は目安)
4-1. 導入前:経験と勘で書く紙の仕込み表
D社の仕込み表は、料理長が営業後に予約台帳を確認し、覚えている過去の出数と照らし合わせて手書きで作っていました。宴会がある日は宴会のコース分を足し、雨の予報なら少し減らす、といった調整も料理長の頭の中で行われます。判断が的確な日も多い一方で、なぜその量にしたのかが記録に残らないため、外れた日の原因を振り返れませんでした。
廃棄と品切れが同時に起きていたのも特徴です。日持ちしない食材を「念のため多め」に仕込んで捨てる日がある一方で、ランチの人気メニューは売り切れる。これは、仕込み量が全体として多すぎる・少なすぎるという話ではなく、メニューごとの配分がずれていることを示しています。
4-2. 導入後のワークフロー
WORKFLOW
D社の仕込み予測ワークフロー
起点は、翌日の予約を締め切る前日17時です。この時刻になると、Claude Code/Codexで作った仕組みが自動で動き出し、3店舗それぞれの翌日の予約数、曜日、天気予報、過去の出数実績を集めます。そこから店舗ごと、ランチとディナーごとに、メニュー別の出数を予測します。
次に、予測した出数にレシピの分量を掛け合わせて、仕込み品ごとの量に展開します。デミグラスソースのように複数のメニューで使う仕込み品は、メニューをまたいで合算され、品目と量の入った仕込み表として1枚にまとまります。ここまでが自動で、料理長の手元には、白紙ではなくほぼ完成した仕込み表が届きます。
料理長は、その仕込み表に対して機械には分からない事情だけを補正します。確定した仕込み表はキッチンのタブレットに表示され、翌日の営業が終わると、予測と実績のズレが記録されます。実際の出数はPOSから取り込み、残った量や品切れの時刻はスタッフがタブレットで入力します。この記録が、次の予測の材料になります。
4-3. 人が確認すること
D社の仕組みで、料理長が必ず確認・判断するのは次の点です。
補正の理由を一言残すのは、記録のためだけではありません。「商店街の祭りでランチ2割増し」のような補正が何度も出てくれば、それは次から予測に組み込める情報です。人の判断が、次の仕組みの改善材料になるという循環が、この仕組みの肝です。
4-4. 導入前後の比較
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 仕込み表の作成 | 約30分 | 約10分(補正のみ) |
| 食材の廃棄率 | 約6% | 約3.5% |
| 品切れ | 月8回 | 月2回 |
仕込み表の作成が約30分から約10分になったのは、料理長の仕事が「ゼロから書く」から「できあがった表を補正する」に変わったためです。食材の廃棄率が約6%から約3.5%に、品切れが月8回から2回に減ったのは、メニューごとの配分が予約と天気に合わせて毎日組み直されるようになったことと、予測と実績のズレの記録から外れ方の癖が修正されていったことによります。
05 5 STEPS 自社で仕込み予測の自動化を始める5ステップ いきなり全部を任せず、「並走」で答え合わせをしてから自動にする
D社のような仕組みは、一度に作る必要はありません。むしろ、いきなり全部を自動化しようとすると失敗します。次の5ステップで、小さく確実に進めるのがおすすめです。
並走中は、①メニュー別の予測出数と実際の出数の差、②料理長の仕込み量と仕組みの仕込み量の差、③品切れの有無と時刻、の3つを毎日記録します。予測が料理長より当たった日だけでなく、料理長のほうが当たった日こそ重要です。その日に料理長が何を見ていたかが、予測に足りない情報を教えてくれます。
06 DATA 出数予測に使うデータと、少ないデータで始める方法 予約・曜日・天気・行事。データが少なくても、段階を踏めば予測は作れる
出数予測の精度は、使うデータで決まります。ただし、最初から多くのデータをそろえる必要はありません。ここでは、仕込み予測に使う代表的なデータと、データが少ない店での始め方を紹介します。
6-1. 仕込み予測に使う5つのデータ
| データ | 主な入手先 | 予測への効き方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 過去の出数実績 | POSレジのメニュー別集計 | 予測の土台。曜日ごとの傾向やメニューの出数比率を出す | 品切れした日は、本当の需要より少なく記録される |
| 予約 | 予約台帳・予約管理サービス | 予約人数とコース内容は、ほぼ確定した需要として使える | キャンセルや人数の増減、予約なしの来店は別に考える |
| 曜日・祝日 | カレンダー | 平日と週末、祝日や連休で客数の水準が変わる | 給料日や近隣の休業日など、店によって効く条件が違う |
| 天気 | 天気予報 | 雨や気温で、予約なしの来店数や注文されるメニューが変わる | 予報は外れることがある。前日夕方時点の予報を使う前提で設計する |
| 地域の行事 | 自治体や商店街の告知、近隣施設のイベント情報 | 祭りや大きなイベントの日は、過去データにない増減が起きる | 年に数回しかないため、機械より人の補正に向いている |
天気は、前日の夕方時点の予報を使うのが現実的です。気象庁の府県天気予報は毎日5時・11時・17時に発表され、明日までの6時間ごとの降水確率や最高・最低気温などが示されます。前日17時に動く仕組みなら、その時点で最新の予報を取り込む設計にします。天気のデータの取り込み方(天気予報のデータ提供サービスを使うなど)は、利用規約を確認したうえで選んでください。
📚 用語解説
POSレジ(ポスレジ):会計のたびに「いつ・何が・いくつ・いくらで」売れたかを記録するレジ。POSはPoint of Sale(販売時点)の略。メニュー別・時間帯別の出数を集計でき、多くの製品でデータをファイルに書き出せるため、仕込み予測の土台になる。
6-2. データが少なくても始められる4段階
「POSを入れてまだ半年」「予約台帳は紙」という店でも、出数予測は作れます。精度を一度に上げようとせず、次の順に段階を踏むのがコツです。ランチとディナーは、最初から分けて考えます。
具体的な数字で見てみます。次の表は、ある金曜日のランチを想定した計算例です。
| 計算の段階 | 例:金曜日のランチ |
|---|---|
| 予約客(確定分) | 12名 |
| 予約なしの客(直近4回の金曜ランチの平均) | 40名 |
| 天気の補正(雨の日は予約なしの客が8割になる店の場合) | 40名 × 0.8 = 32名 |
| 客数の予測 | 12名 + 32名 = 44名 |
| ハンバーグの出数(出数比率30%の場合) | 44名 × 30% ≒ 13食 |
📚 用語解説
移動平均:直近の一定期間(または直近の決まった回数)の平均を、新しいデータが入るたびに計算し直す方法。「直近4回の金曜の平均」を毎週計算し直すのが一例。日々のばらつきをならしながら、季節の変化にも少しずつ追いつけるため、データが少ない段階の予測に向いている。
複数の店舗がある場合、新しい店やデータの少ない店は、立地や客層の近い店の出数比率を借りて始める方法もあります。同じメニュー構成なら出数比率は近くなりやすいので、自店のデータがたまるまでのつなぎとして使い、少しずつ自店の数字に置き換えます。
6-3. 予測は「1つの数字」ではなく「幅」で持つ
予測は必ず外れます。大事なのは、外れたときにどちらへ外れると損が小さいかを、仕込み品ごとに決めておくことです。たとえば、冷凍や冷蔵で翌日に回せる仕込み品は予測の上限寄りに、作り置きがきかず原価の高い仕込み品は予測の下限寄りに仕込み、足りなくなりそうなら営業中に追加で仕込む、という考え方です。
この判断は、品切れしたときに失う粗利と余ったときに捨てる原価の比較です。粗利の大きい看板メニューは品切れの損が大きいので多めに、原価が高く日持ちしない食材は廃棄の損が大きいので控えめに。このように経営の数字で決められるので、予測を幅で持ち、どちら寄りに仕込むかを仕込み品ごとのルールにしておけば、その部分も自動化できます。
6-4. 品切れした日のデータの扱い
ハンバーグが13時に売り切れた日の出数が20食だったとしても、本当は30食出たかもしれません。この数字をそのまま過去の実績として使うと、予測はどんどん少なめに引っ張られ、品切れが増える悪循環に入ります。品切れした日と時刻を必ず記録し、予測の計算では品切れの日を除くか、割り増して扱うルールにしておきましょう。
07 PREP SHEET 仕込み表の作り方:レシピの分量・歩留まり・作り置きできる時間 予測した出数を、厨房で使える仕込み表に変える
出数を予測しても、それだけでは厨房は動けません。「デミグラスソースを鍋に何杯、玉ねぎを何kg、何時までに」という仕込み表に変えて、初めて現場の仕事になります。その変換の元になるのが仕込み品マスタです。
7-1. 仕込み品マスタに持たせる項目
仕込み品マスタは、メニューと仕込み品の関係を1つの表にまとめた、店の基本台帳です。製造業でいう部品表と同じで、1つのメニューが複数の仕込み品を使い、1つの仕込み品が複数のメニューで使われる、という関係を整理します。
| 項目 | 中身 | 記入の例 |
|---|---|---|
| 仕込み品名 | 仕込みの単位になる品目 | デミグラスソース |
| 使うメニューと1食あたりの使用量 | どのメニューに何g(何ml)使うか | ハンバーグに80ml、オムライスに60ml |
| 歩留まり | 下処理前の量に割り戻すための割合 | 玉ねぎ(皮と根を除く)90% |
| 仕込みの単位 | 鍋・バット・袋など、実際に作る単位 | 鍋1つ=40食分 |
| 作り置きできる時間 | 店の衛生管理計画で決めた使い切りの期限 | 店のルールで決めた期限を記入 |
| 保存方法と温度 | 冷蔵・冷凍・保温などの区分 | 冷蔵(10℃以下) |
| 所要時間と担当 | 仕込みに何分かかり、誰が担当するか | 約40分・キッチン担当 |
この中で、自動化の前に特にきちんと決めておきたいのが「作り置きできる時間」と「仕込みの単位」です。この2つがあいまいなままだと、計算上は正しくても、現場では使えない仕込み表になります。
7-2. 計算した量を「仕込みの単位」に丸める
計算上はデミグラスソースが3.2リットル必要でも、厨房では「鍋1つ分」で作ることが多いはずです。そこで、計算した量を仕込みの単位に丸めるルールを決めます。切り上げるのか、半端な分は前日の残りで補うのか、最低でも鍋1つは作るのか。こうしたルールは店ごとに違うので、料理長と相談して仕込み品マスタに書き込みます。
7-3. 作り置きできる時間で「いつ仕込むか」を振り分ける
仕込み表には、量だけでなくいつ仕込むかも書きます。作り置きできる時間が長いものはまとめて、短いものは営業の直前に分けて、予測の幅が大きいものは営業中の追加仕込みで、という振り分けです。
最後の「営業中の追加仕込み」は、品切れと廃棄を同時に減らす強力な方法です。仕込み表に「残りが5食分を切ったら追加」という追加仕込みラインを書いておけば、最初から多めに仕込まなくても品切れを防ぎやすくなります。追加に必要な時間を見込んで、ラインの高さを決めるのがポイントです。
7-4. 設備とメニュー設計で「仕込みの幅」を広げる
仕込み量の問題は、設備やメニューの設計でも和らげられます。急速冷却機(ブラストチラー)を使えば加熱後の冷却を早められ、真空包装機を使えば保存中の品質を保ちやすくなるため、まとめて仕込める範囲が広がります。また、同じ仕込み品を複数のメニューで使う「クロスユース」を意識してメニューを組むと、メニュー別の出数が外れても、仕込み品の段階で吸収しやすくなります。
複数店舗でソースなどを1か所にまとめて仕込み、各店に配る場合は、各店の予測出数を合算した仕込み表が必要です。店舗ごとの予測が仕組みで出ていれば、この合算も自動でできます。
7-5. タブレットで見やすい仕込み表にする
仕込み表の見せ方も、現場で使われるかどうかを左右します。D社のようにキッチンのタブレットに表示する場合は、次のような工夫が効きます。
08 HUMAN JUDGMENT 人が判断すること・よくある落とし穴 予測は提案、確定は人。責任の所在を最初に決めておく
8-1. 人が判断すること
仕込み予測を自動化しても、人が判断すべきことは残ります。むしろ、人が判断すべきことをはっきりさせることが、自動化を安全に回す条件です。
| 判断すること | 内容 | 判断する人 |
|---|---|---|
| 最終確認 | 仕込み表の量と使い切りの期限に違和感がないかを見て確定する | 料理長(各店の厨房責任者) |
| 例外への対応 | 宴会の内容変更、地域の行事、台風などの急な天候の変化、食材の欠品 | 料理長・店長 |
| 衛生の判断 | 作り置きの時間と温度、食材の状態の確認 | 料理長・衛生管理の責任者 |
| ルールの変更 | メニュー改定、歩留まりの見直し、追加仕込みラインの変更 | 料理長と経営者 |
責任の所在も明確にしておきます。AIが出すのはあくまで予測と仕込み表の案で、仕込み表を確定するのは料理長です。確定した人と補正の理由を仕込み表に残しておけば、外れた日にも「予測が外れたのか、補正が外れたのか」を落ち着いて振り返れます。記録は責める材料ではなく、改善の材料として使うことが大切です。
8-2. よくある落とし穴
仕込み予測の自動化でつまずきやすいポイントを挙げます。
出数予測は、仕込みだけでなく発注にも使えます。予測した出数から食材の発注量まで自動でつなげたい場合は、食材発注を自動化する在庫連動システム完全ガイドで発注側の考え方を確認しておくと、仕組みを広げるときに迷いません。
09 THE 3 WALLS 独学でつまずく3つの壁と越え方 仕組みづくりが途中で止まる理由と、その越え方
Claude Code/Codexを使えば、仕込み予測の仕組みは自社でも作れます。ただし、独学で進めると、多くの店が次の3つの壁で止まります。
壁1:料理長の勘を言葉にできない
仕組みは、指示されたとおりにしか動きません。「雨の日は少なめ」の「少なめ」が何割なのか。料理長の判断を数字とルールに置き換えないまま作ると、あいまいな指示を毎日正確に実行する仕組みができあがります。越え方は、過去の仕込み表を見ながら「この日はなぜこの量にしたか」を料理長に話してもらい、その理由を一つずつルールにしていくことです。
壁2:予測が当たっているかを確かめる方法がない
予測の仕組みは、動いているように見えても正しいとは限りません。並走の期間を設けずに本番に入ると、外れ方の癖に気づかないまま廃棄や品切れを増やします。越え方は、第5章の並走と、予測と実績のズレの記録を、最初から仕組みの一部として作っておくことです。確かめ方の型があれば、メニュー改定や新しい店でも同じ手順で精度を確かめられます。
壁3:作った人しか直せない
誰か1人が独学で作った仕組みは、その人が異動したり辞めたりした瞬間に止まります。仕込み品マスタの更新方法、計算ルールの変え方、動かなくなったときの確認手順を、料理長と本部の管理者など複数の人が扱える状態にしておく必要があります。技術の問題というより、教え方と運用の設計の問題です。
10 SUMMARY まとめ:予測は仕組みに、補正は料理長に 仕込みを「毎晩の負担」から「毎日精度が上がる仕組み」へ
仕込み量の予測は、飲食店の業務の中でも自動化の効果が大きい領域です。毎日必ず発生し、計算の大部分は決まったルールで出せて、しかも廃棄と品切れという形で利益に直結するからです。
予測を仕組みに任せ、料理長には補正という一番価値のある判断に集中してもらう。この役割分担ができると、仕込みは「毎晩の負担」から「毎日精度が上がっていく仕組み」に変わります。
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よくある質問
Q. 事例のD社は実在する会社ですか?
A. 実在する会社ではありません。本記事のD社は、AI鬼管理が支援を想定した仮名のモデル事例で、数値は目安です。洋食レストランの仕込みで起きやすい状況をもとに、仕組みの動き方と人が判断する部分を具体的に示すために設定しています。
Q. 飲食店の仕込み量はどうやって決めればいいですか?
A. 基本は「予測出数 × 1食あたりの使用量 − 使える作り置きの残り」で仕込み量を出し、下処理前の食材の量は歩留まりで割り戻して求めます。予測出数は予約・曜日・天気・過去の出数実績から見積もり、客数の予測にメニューの出数比率を掛けて出すと扱いやすくなります。作り置きできる時間は店の衛生管理計画で決め、仕込み表には使い切りの期限も書いておきます。
Q. POSレジを入れて間もなく、データが少なくても予測できますか?
A. できます。まずは同じ曜日の直近4回の平均から始め、予約客と予約なしの客を分ける、天気の補正を足す、メニューの出数比率を掛ける、という順に段階を踏めば、4週間分ほどのデータからでも予測を作れます。品切れした日は本当の需要より少なく記録されるため、品切れの時刻も一緒に記録してください。
Q. AIの予測どおりに仕込んで品切れや廃棄が出たら、誰の責任になりますか?
A. 仕込み表を確定した人の責任として運用するのが基本です。AIが出すのは予測と仕込み表の案で、宴会の内容や地域の行事、食材の状態を見て補正し、確定するのは料理長などの厨房責任者です。確定者と補正の理由を記録しておけば、外れた原因を振り返って次の予測の改善につなげられます。
Q. プログラミングができなくても仕組みを作れますか?
A. Claude Code/Codexには日本語で指示できるため、プログラミングの経験がなくても、データの整理や仕込み表の作成といった仕組みづくりを進められます。ただし、料理長の判断をルールにする作業と、予測が当たっているかを確かめる並走の期間は欠かせません。ここを飛ばすと、あいまいな指示をそのまま毎日実行する仕組みになってしまいます。
Q. 需要予測の専用システムとClaude Code/Codexで作る仕組みは、どう使い分ければいいですか?
A. 専用システムは予測の機能がすでに完成しているため、導入後すぐに使い始めやすいのが強みです。一方、Claude Code/Codexで作る仕組みは、今使っているPOSや予約台帳、スプレッドシートのデータをそのまま使い、店独自の仕込み品マスタや補正のルールに合わせられます。小さく試したい店や、仕込み表の形まで自店に合わせたい店に向いています。
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