労働基準法の改正は2026年どうなる?大改正の見送りと、実際に動く制度を整理し、社労士事務所が顧問先対応をAIで自動化する方法
「労基法が改正されるって聞いたんですが、結局いつから何が変わるんですか?」——顧問先からこう聞かれて、即答に困った経験はないでしょうか。実は「労働基準法の改正」という言葉の中には、時期も内容もまったく違う3つの話が混在しています。
1つ目はすでに施行済みの働き方改革関連法による労基法改正(有給休暇の取得義務化、時間外労働の上限規制など)。2つ目は、2025年12月に2026年の通常国会への法案提出が見送られた「約40年ぶりの大規模改正」(連続勤務の上限規制、勤務間インターバル制度の義務化などが論点)。3つ目は、労基法そのものではなく別の法律「パートタイム・有期雇用労働法」の施行規則と告示の改正で、これは2026年10月に実際に施行されます。
この記事では、この3つを厚生労働省の公式情報にもとづいて整理したうえで、後半では法改正の動向を顧問先ごとに正しく伝える周知文書の作成を、AI社員AIKATAに任せて自動化する方法を解説します。
01 ALREADY IN FORCE ①すでに施行されている労基法改正(働き方改革関連法) 有給取得義務化・時間外労働の上限規制・中小企業の割増強化
2019年4月から段階的に施行された「働き方改革関連法」により、労働基準法は複数の改正を受けています。顧問先対応でまず確認すべきは、この施行済みの制度への対応に漏れがないかです。
📚 用語解説
働き方改革関連法:2018年に成立し、2019年4月から段階的に施行された、労働基準法・労働安全衛生法など複数の法律の改正をまとめた法律の通称。年次有給休暇の取得義務化、時間外労働の上限規制、高度プロフェッショナル制度の創設などを内容とする(出典: 厚生労働省)。
| 改正項目 | 施行時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 有給休暇の取得義務化 | 2019年4月〜(全企業) | 年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、事業主は年5日以上の取得を確実にさせる義務を負う |
| 時間外労働の上限規制 | 大企業: 2019年4月〜 中小企業: 2020年4月〜 | 原則月45時間・年360時間。特別条項があっても年720時間以内等の上限(違反時は罰則あり) |
| 中小企業の月60時間超残業の割増強化 | 2023年4月〜(中小企業にも適用) | 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を25%→50%に。大企業は2010年から適用済みで、中小企業の猶予措置が2023年4月に廃止された |
| 高度プロフェッショナル制度 | 2019年4月〜 | 年収1,075万円以上を想定した高度専門職について、労働時間規制を除外する一方、健康確保措置を義務化 |
📚 用語解説
時間外労働の上限規制:36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)を結んでも超えてはならない上限。原則は月45時間・年360時間で、臨時的な特別の事情がある場合の特別条項を結んでも、年720時間以内・複数月平均80時間以内・月100時間未満等の上限を超えることはできない。違反した場合、事業主に6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される規定がある(出典: 厚生労働省)。
1-1. 顧問先対応では「対応済みの証拠」の確認がセット
これらの施行済み制度は、法律上の義務であるだけでなく、労働基準監督署の調査で確認される対象でもあります。有給休暇の取得義務化であれば「年5日の取得状況を記録した年次有給休暇管理簿」の有無、時間外労働の上限規制であれば「36協定の届出内容と実際の労働時間の整合性」、中小企業の割増強化であれば「給与計算上、月60時間を超える時間外労働に正しく50%の割増率が適用されているか」が、具体的な確認対象になります。
顧問先に「制度は知っています」と言われても、記録簿が整備されているか、給与計算に正しく反映されているかは別の話です。法改正の説明だけで終わらせず、実際の運用状況を顧問先ごとに確認する工程まで含めて対応することが、調査対応力の差になります。
1-2. 年ごとの改正項目と施行日——中小企業への適用時期と罰則もセットで確認する
働き方改革関連法施行の後も、労働基準法とその省令は数年おきに見直されています。顧問先対応で迷いやすいのは、同じ改正でも大企業と中小企業で施行日がずれていたり、一部の業種だけ適用が猶予されていたり、法律ではなく省令・告示の改正で実務が変わったりする点です。主な改正を施行日の順に並べると、次のとおりです。
| 施行日 | 改正項目 | 対象・中小企業への適用 |
|---|---|---|
| 2019年4月 | 年5日の年次有給休暇の時季指定義務、時間外労働の上限規制、フレックスタイム制の清算期間の上限を3か月に延長、高度プロフェッショナル制度の創設、労働条件の明示をFAX・電子メール等でも可能に(労働者が希望した場合) | 上限規制は大企業のみ。ほかの項目は企業規模を問わず適用(2026年10月時点・厚生労働省「改正労働基準法に関するQ&A」) |
| 2020年4月 | 時間外労働の上限規制を中小企業にも適用。賃金請求権の消滅時効と、労働者名簿・賃金台帳などの記録の保存期間を5年に延長(経過措置で当分の間は3年) | 上限規制は中小企業。時効・記録の保存は全企業(2026年10月時点・厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A(令和2年4月1日)」) |
| 2021年4月 | 36協定届の様式の改正(使用者の押印・署名が不要に、過半数代表者等のチェックボックスを新設) | 全企業(2026年10月時点・厚生労働省・都道府県労働局の36協定届の新様式の案内) |
| 2023年4月 | 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率50%以上を中小企業にも適用 | 中小企業(大企業は適用済み) |
| 2024年4月 | 建設業・自動車運転の業務・医師などへの上限規制の適用開始、労働条件の明示事項の追加(就業場所・業務の変更の範囲、更新上限、無期転換の申込機会と転換後の労働条件)、裁量労働制の手続の見直し | 業種・雇用形態・制度の有無で関係する顧問先が分かれる(2026年10月時点・厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」)(2026年10月時点・厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」)(2026年10月時点・厚生労働省「専門業務型裁量労働制の解説」「企画業務型裁量労働制の解説」) |
罰則も施行日とセットで押さえておきます。上限規制に違反した場合は、労基法第119条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(2026年10月時点・厚生労働省「確かめよう労働条件」)。年5日の時季指定義務に違反した場合は労基法第120条の30万円以下の罰金の対象で、厚生労働省のQ&Aは、罰則による違反は対象となる労働者1人につき1罪として取り扱うとしています(2026年10月時点・厚生労働省「改正労働基準法に関するQ&A」)。顧問先に「罰則があります」と伝えるときは、条文と、人数分で数えられることまで添えると、管理の手を抜けない理由が伝わります。
2024年4月の3項目は、顧問先によって関係の有無がはっきり分かれます。建設・運送・医療の顧問先は上限規制の適用開始(2024年3月までは適用が猶予されていました)、有期契約の社員が多い顧問先は労働条件通知書のひな形の差し替え、裁量労働制を使っている顧問先は協定・決議のやり直しが対象です。顧問先台帳に「業種・有期契約の有無・裁量労働制の有無」の欄を作っておくと、施行日ごとに確認すべき顧問先をすぐに絞り込めます。
1-3. フレックスタイム制と年5日の時季指定は、厚労省Q&Aの細かい扱いで間違えやすい
フレックスタイム制は、2019年4月から清算期間の上限が3か月になりました。清算期間が1か月を超える場合は、労使協定を所轄の労働基準監督署に届け出る必要があり(違反は30万円以下の罰金)、清算期間全体だけでなく1か月ごとにも週平均50時間を超えないようにする必要があります(2026年10月時点・厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」)。1か月清算から3か月清算に切り替えた顧問先で、届出が漏れていないかは最初に確かめる点です。
時間外労働の数え方も、清算期間が1か月を超えると変わります。各月で週平均50時間を超えた時間はその月の時間外労働としてその月の賃金で支払い、清算期間が終わった時点で総枠を超えた時間(各月で数えた分を除く)は、最終月の時間外労働として数えます(2026年10月時点・厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」)。最終月に時間外労働がまとまって計上されるため、その月だけ月60時間を超えて割増率が上がったり、上限規制の月100時間未満の判定に響いたりすることがあります。清算期間の延長を相談されたら、最終月の時間外労働を試算してから導入を勧めるのが安全です。
年5日の時季指定は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)が対象で、時季を指定するときは本人の意見を聴き、できる限り希望に沿うよう努める必要があります。半日単位での時季指定は認められますが、時間単位の年休は5日から差し引けません。また、時季を指定しただけでは足りず、実際に5日を取得していなければ法違反となり、指定した日に本人が出勤して使用者が労働を受け取った場合も、取得したことにはなりません(2026年10月時点・厚生労働省「年次有給休暇の時季指定」)(2026年10月時点・厚生労働省「改正労働基準法に関するQ&A」)。顧問先には、年次有給休暇管理簿で基準日から半年の時点の取得日数を確かめ、足りない社員に早めに時季指定をする流れを勧めると、年度末の駆け込みを防げます。
1-4. 36協定届の新様式記入時の注意点と、電子申請の取扱い
現行労基法の原則上限は月45時間・年360時間(対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制では月42時間・年320時間)です。臨時的な特別の事情がある場合の特別条項付きの36協定でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満かつ2〜6か月平均80時間以内に収める必要があり、月45時間を超えられるのは年6か月までです。2〜6か月平均は、36協定の対象期間にかかわらず前の協定期間の月もまたいで計算します(2026年10月時点・厚生労働省「改正労働基準法に関するQ&A」)。協定の更新月をまたぐ月の平均を見落としやすいので、顧問先の集計表は協定期間で区切らずに続けて計算する形にしておきます。
2021年4月からの新様式では、使用者の押印・署名が不要になった一方、協定の当事者が過半数労働組合または適正に選ばれた過半数代表者であることを確認するチェックボックスが設けられ、チェックがない協定届は有効な届出として扱われません。協定届を協定書と兼ねる場合は、労使双方の記名押印または署名が必要なままです(2026年10月時点・厚生労働省・都道府県労働局の36協定届の新様式の案内)。新様式記入時の注意点としては、このチェック漏れのほか、業務の種類や時間外労働をさせる必要のある具体的な事由を顧問先の実態に合わせて書くこと、特別条項では限度時間を超えて働く社員の健康福祉確保措置を選んで記入し、その実施記録を残すことが挙げられます。
電子申請(e-Gov)による届出は、2021年4月1日から電子署名・電子証明書が不要になっています。複数の事業場がある顧問先が本社でまとめて届け出る本社一括届出は、電子申請であれば事業場ごとに労働者代表が異なる場合でも本社の届出と一緒に提出でき、提出先は本社を管轄する労基署です(2026年10月時点・厚生労働省の労働基準法関係の電子申請の案内)。事務所が提出代行する場合は、提出後の控えと受付の記録を顧問先ごとに保存しておくと、調査の際にすぐ示せます。
なお、業務委託契約者として働いている人でも、契約の名称にかかわらず、指揮監督の下で働き報酬が労務の対価として支払われている実態があれば、労働基準法上の労働者と判断されます(2026年10月時点・厚生労働省「労働基準法における『労働者』とは」)。その場合は上限規制や36協定の対象になるため、外注を多く使う顧問先では、契約書の名称ではなく働き方の実態を確かめておくことが欠かせません。
1-5. 労基法以外の関連法令の改正も、同じ年表で確かめる——同一労働同一賃金・育児・介護休業法・障害者雇用
1-2の年表にある建設業・運送業・医師などへの上限規制の適用のように、労基法の改正は業種や規模によって関係する顧問先が分かれます。同じ時期には労基法以外の関連法令も改正されており、顧問先の就業規則や手続に響くのはむしろこちら、という場面も多くあります。事務所で持つ人事労務の法令改正一覧には、次の改正も並べておくと、重要な確認漏れを防げます。
| 施行日 | 関連法令の改正 | 顧問先で確かめること |
|---|---|---|
| 2020年4月 (中小企業は2021年4月) | パートタイム・有期雇用労働法の施行。正社員とパート・有期雇用労働者の間の不合理な待遇差を禁止(同一労働同一賃金)(2026年10月時点・厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」) | 雇用形態による待遇格差について、手当・賞与・休暇ごとに理由を説明できるか |
| 2023年4月 | 育児・介護休業法:常時雇用する労働者が1,000人を超える企業に、男性の育児休業等の取得状況を年1回公表する義務(2026年10月時点・厚生労働省・都道府県労働局「2023年4月から、従業員が1,000人を超える企業は男性労働者の育児休業取得率等の公表が必要です」) | 対象の顧問先が、事業年度ごとに公表を続けているか |
| 2025年4月 | 育児・介護休業法:子の看護休暇を「子の看護等休暇」に改めて対象を小学校3年生修了までに広げ、所定外労働の制限(残業免除)の対象を小学校就学前の子まで拡大。男性の育児休業取得状況の公表義務化を、300人超1,000人以下の企業にも拡大(2026年10月時点・厚生労働省「法改正のポイント|育児休業制度特設サイト」) | 育児・介護休業規程が改定されているか。公表の対象に入った顧問先はどこか |
| 2025年4月 | 雇用保険:出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金の創設(2026年10月時点・東京労働局「育児休業等給付について(出生後休業支援給付制度・育児時短就業給付 令和7年4月1日施行)」) | 育児休業や時短勤務の社員がいる顧問先で、申請の段取りと書類の受け渡しを決めているか |
| 2025年4月 | 障害者雇用除外率の引下げ。除外率設定業種ごとに、それぞれ10ポイント引下げ(2026年10月時点・厚生労働省・大阪労働局・ハローワーク大阪東「法定雇用障害者の数を算出する際の除外率が引き下げられます」) | 除外率を使って法定雇用障害者数を計算していた顧問先の、計算のやり直し |
| 2025年10月 | 育児・介護休業法:3歳から小学校就学前の子を養育する労働者について、「柔軟な働き方を実現するための措置」を5つの選択肢から2つ以上講じる義務と、子が3歳になるまでの個別の周知・意向確認の義務(2026年10月時点・厚生労働省「法改正のポイント|育児休業制度特設サイト」) | 選んだ措置が規程に書かれ、対象の社員に個別に周知されているか |
社会保険の手続でも、申請手続の簡素化が進んでいます。3歳未満の子を養育する社員の厚生年金保険の養育特例(養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置)の申出では、事業主が戸籍謄(抄)本等で申出者と子の身分関係を確認し、申出書の「確認済み」にチェックを入れた場合などは、戸籍謄(抄)本等の添付を省略できます(2026年10月時点・日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」)。事務所が手続を代行する顧問先では、顧問先側でだれが何の書類で確認したかを記録してもらっておくと、後から問い合わせがあっても説明できます。
これらは労基法の改正ではないため、顧問先から「労基法改正で何が変わったか」と聞かれた時に抜けやすい項目です。労基法の年表と関連法令の年表を同じ形式で並べ、顧問先台帳の「従業員数・育児中の社員の有無・障害者雇用の対象かどうか」の欄と突き合わせると、施行日ごとに案内すべき顧問先をすぐに絞り込めます。
02 POSTPONED ②「約40年ぶりの労基法大改正」は2026年、国会提出を見送り 首相の方針転換で、緩和も含めた再検討に入った
労働基準法の約40年ぶりとされる大規模改正は、当初2026年の通常国会に法案が提出される見通しでした。しかし2025年12月26日の記者会見で、厚生労働大臣が「2026年の通常国会での法案提出は現在のところ考えていない」と表明し、見送りが決まりました。
見送りの理由は、首相から労働時間規制の緩和を含めて検討するよう指示があり、政府の成長戦略を議論する会議でも働き方が論点になったためです。改正の議論自体がなくなったわけではなく、2026年7月に閣議決定された「骨太の方針2026」で、2026年夏以降に労働政策審議会で議論を行うことが示されています。顧問先に「もう関係ない話」と案内してしまうと、後から訂正が必要になるおそれがあります。
2-1. 現在議論されている主な論点
労働政策審議会で議論が再開された論点としては、連続勤務の上限規制や勤務間インターバル制度の義務化などが挙げられています。いずれも現時点では「検討中」の段階であり、まだ法律として確定していません。
📚 用語解説
勤務間インターバル制度:終業時刻から次の始業時刻までの間に、一定時間以上の休息時間を確保する仕組み。現在は労働時間等設定改善法にもとづく努力義務(企業の努力目標)であり、義務化はされていない。労働基準法の大規模改正の論点として、この努力義務を義務規定に強化するかどうかが議論されている(出典: 厚生労働省)。
2-2. 議論の背景と最新動向——研究会報告書から労働条件分科会の再開まで
議論の背景には、働き方改革関連法施行から数年経過し、施行状況を踏まえた見直しの時期を迎えていることと、テレワークや副業・兼業など働き方が多様になり、今の労働時間制度では対応しきれない場面が増えていることがあります。厚労省は2025年1月8日に「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表し、連続勤務や法定休日、勤務間インターバル、副業・兼業の労働時間通算などについて、見直しの方向を提言しました(2026年10月時点・厚生労働省「『労働基準関係法制研究会』の報告書を公表します」)。
この報告書を受けて、2025年1月から労働政策審議会労働条件分科会で議論が行われましたが、2025年12月26日の大臣会見で、2026年の通常国会への法案提出は考えていないと表明されました。その後、2026年7月21日に閣議決定された骨太方針で、労働時間法制等に係る政策対応について夏以降の労働政策審議会で議論を行うとされ(2026年10月時点・内閣府「骨太方針2026」2026年7月21日閣議決定)、2026年9月16日の第211回労働条件分科会で議論が再開されています。同日の資料「今後の議論の進め方(案)」では、月2〜3回程度の頻度で議論する案が示されています(2026年10月時点・厚生労働省「第211回労働政策審議会労働条件分科会」資料「今後の議論の進め方(案)」)(2026年10月時点・厚生労働省「大臣会見概要」2025年12月26日・2026年9月1日・2026年9月18日)。
2026年10月時点の最新動向として押さえておくべきなのは、法案の提出時期や施行日は公式には示されておらず、未確定だという点です。顧問先への案内では「〇年〇月から変わる」とは書かず、「労働政策審議会で検討中」と、分科会の開催日を添えて伝えるのが安全です。
2-3. 主要論点の一覧——いずれも検討中で、確定事実ではない
2026年9月の分科会資料では、今後の論点として、勤務間インターバル制度、連続勤務規制、「つながらない権利」、裁量労働制、変形労働時間制、副業・兼業、テレワーク・フレックスタイム制、その他(過半数代表者等、法定休日、年次有給休暇)が挙げられています(2026年10月時点・厚生労働省「第211回労働政策審議会労働条件分科会」資料「今後の議論の進め方(案)」)。研究会報告書の提言内容と並べると、次のように整理できます。表の右の列は、どれも制度改正が決まったものではなく、検討中の案です。
| 論点 | 現行制度 | 研究会報告書の提言内容など(検討中) |
|---|---|---|
| 連続勤務 | 休日は毎週1日か4週4日でよく、休日の置き方によっては長い連続勤務も法律上は可能 | 13日を超える連続勤務をさせてはならない旨の規定を設けるべきとの提言 |
| 法定休日 | 法定休日をどの日にするか特定することまでは、法律で求められていない | あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上規定するよう提言(位置づけの明確化) |
| 勤務間インターバル | 労働時間等設定改善法の努力義務 | 法規制の強化に向けた検討。骨太方針でも法的位置付けが論点に |
| 業務時間外の連絡対応 | 労基法に直接の定めはない | 「つながらない権利」として、社内ルールを労使で話し合うことを促すガイドラインの策定などを検討 |
| 副業・兼業 | 本業と副業の労働時間を通算し、通算して法定時間を超えた分に割増賃金を払う運用 | 健康確保のための通算は維持しつつ、割増賃金計算のための労働時間通算は要しないよう制度改正に取り組むべきとの提言 |
| フレックスタイム制 | 一部の日だけ通常の勤務と組み合わせる使い方はできない | 部分的にフレックスタイム制を使える仕組みの導入を提言 |
| テレワーク・在宅勤務 | 今ある労働時間制度の中で運用 | テレワーク向けの新たなみなし労働時間制は継続して検討 |
| 裁量労働制・変形労働時間制 | 2024年4月に裁量労働制の手続を見直し済み | 骨太方針で、濫用防止措置を前提に裁量労働制の対象の在り方の見直しを検討。変形労働時間制も論点に |
| 週44時間の特例 | 一部の小規模な事業場は週44時間まで可能 | 対象事業場の87.2%が使っていないことから、撤廃に向けた検討を提言 |
| 年休取得日の賃金 | 平均賃金・通常の賃金・標準報酬月額の30分の1の3つから選ぶ(労基法第39条第9項) | 算定方法の妥当性を検討 |
表の出典は、論点が分科会資料(2026年10月時点・厚生労働省「第211回労働政策審議会労働条件分科会」資料「今後の議論の進め方(案)」)、現行制度と提言内容が研究会報告書(2026年10月時点・厚生労働省「『労働基準関係法制研究会』の報告書を公表します」)、裁量労働制の見直しが骨太方針(2026年10月時点・内閣府「骨太方針2026」2026年7月21日閣議決定)です。多様な働き方に合わせて労働時間制度を柔軟にする論点(部分フレックス・テレワーク・副業・兼業時の通算の見直し)と、健康を守るための規制を強める論点(連続勤務・勤務間インターバル・法定休日の特定)が同時に議論されている点が、顧問先に説明するときのポイントです。どちらに転ぶかは今後の議論次第で、規制の緩和だけ、強化だけと決めつけた案内は避けます。
副業・兼業時の扱いについても、提言されているのは割増賃金の計算の通算をやめることで、健康確保のための労働時間の把握は残す方向です。副業を認めている顧問先には「通算が不要になる」とだけ伝えず、「割増賃金計算のための労働時間通算は見直しが検討中、健康確保の把握は続く見込み」と分けて伝える必要があります。業務時間外の連絡対応も、法律で禁止される話ではなく、社内ルールを労使で決める方向の議論である点を添えておくと、過度な心配を防げます。
2-4. 裁量労働制は、現行制度の運用と厚労省実態調査の結果を見てから
2024年4月1日から、専門業務型では本人の同意を得ることを労使協定で定め、同意しなかった人を不利益に扱わないこと、同意を撤回する手続を決めることが必要になり、対象業務にM&Aアドバイザリーの業務が加わりました。企画業務型裁量労働制では、労使委員会の決議(委員の5分の4以上の多数)、本人の同意、決議の届出に加え、定期報告は決議の有効期間の始まりから6か月以内に1回、その後1年以内ごとに1回となっています。2024年4月1日以降も制度を続けるには、改正に沿った協定・決議をやり直して届け出ている必要がありました(2026年10月時点・厚生労働省「専門業務型裁量労働制の解説」「企画業務型裁量労働制の解説」)。
この現行制度の運用実態を把握するため、労働政策研究・研修機構による裁量労働制実態調査(事業場調査と労働者調査)が令和8年7〜8月に行われ、本年秋をめどに結果を示す予定と、2026年5月の分科会で説明されています(2026年10月時点・厚生労働省「第209回労働政策審議会労働条件分科会」議事録)。骨太方針では濫用防止措置を前提に対象の在り方の見直しを検討するとしており(2026年10月時点・内閣府「骨太方針2026」2026年7月21日閣議決定)、どのような制度改正になるかは、この厚労省実態調査の調査結果次第です。
裁量労働制を使っている顧問先では、見直しの結論を待つ間に、同意書と撤回の手続、健康・福祉確保措置の実施記録、企画業務型であれば定期報告の提出時期がそろっているかを確かめておきます。調査結果が公表されたら、その時点で分科会資料を読み直し、対象業務の範囲に関わる顧問先から順に案内します。
2-5. 労基署の指導実務の見直しは、上限規制の変更ではない
骨太方針では、重大・悪質な事案には厳正に対応しつつ、労使の合意にのっとった指導が行われるよう労基署の指導を速やかに見直すとされました(2026年10月時点・内閣府「骨太方針2026」2026年7月21日閣議決定)。これを受けて2026年9月1日の大臣会見では、上限規制の範囲内で労使の合意に基づき適法に行われている時間外労働について、月45時間以内に収める一律の指導を見直したと説明され、上限規制そのものは変えず、その遵守を徹底するとされています(2026年10月時点・厚生労働省「大臣会見概要」2025年12月26日・2026年9月1日・2026年9月18日)。
つまり、現行労基法の原則上限(月45時間・年360時間)と、特別条項付きの36協定の上限(年720時間以内など)は変わっていません。変わったのは、上限の範囲内で適法に結ばれた36協定どおりの時間外労働に対する、労基署の指導実務の運用です。36協定を超えた時間外労働や、上限を超える協定は、従来どおり違反として扱われます。
顧問先への案内では、「残業規制が緩和された」ではなく「上限の範囲内で協定どおりに運用している場合の労基署指導の見直し」と書き分けます。特別条項の発動手続や健康福祉確保措置の記録が整っていない顧問先は、適法な運用と言えない可能性があるため、この見直しを理由に管理をゆるめないよう伝えることが大切です。
2-6. 議論されている変更点が決まったら、顧問先の実務のどこが変わるか
2-3で整理した論点は、どれも検討中です。そのうえで、研究会報告書の提言どおりに決まった場合を想定すると、顧問先の就業規則・シフト・給与計算・労働時間管理のどこに手が入るかは、今から見通せます。主な変更点を実務の言葉に置き換えると、次のとおりです(提言の内容は2026年10月時点・厚生労働省「『労働基準関係法制研究会』の報告書を公表します」)。
| 議論されている変更点(いずれも検討中) | 決まった場合に手が入る所 | いま確かめておくこと |
|---|---|---|
| 連続勤務の上限:2週間以上の連続勤務を防ぐ観点から、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を設けるべきとの提言 | シフト表の組み方、36協定の休日労働の条項 | 14日以上の連続勤務が出ている社員・部署がないか |
| 法定休日の特定義務化:あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上に規定するよう取り組むべきとの提言 | 就業規則の休日の条文、休日の振替の手続 | 就業規則に法定休日がどの日か明示されているか。シフト制の社員の休日をいつ決めているか |
| 年休取得日の賃金算定:日給制・時給制でも、原則として所定労働時間働いた場合に支払われる通常の賃金で払う方法(いわゆる通常賃金方式)をとるようにしていくべきとの考え方 | 給与計算の年休の単価の設定、就業規則の賃金の条文 | 日給・時給の社員に、平均賃金や標準報酬月額の30分の1で払っていないか |
| 業務時間外の連絡:どこまでの時間外連絡が許容され、どこからは拒否できるかの社内ルールを労使で話し合うことを促す方策(ガイドラインの策定等)を検討 | 社内の連絡ルール、顧客対応の当番の決め方 | 時間外連絡の実態と、時間外連絡を制限する社内ルールの有無 |
| 副業・兼業の割増賃金:健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払いについては通算を要しないよう制度改正に取り組むことが考えられるとの提言 | 割増賃金の計算方法、副業の申告書 | 副業先の労働時間を、何の書類で把握しているか |
| 週44時間の特例措置:対象事業場の87.2%が使っていないことから、撤廃に向けた検討に取り組むべきとの提言 | 所定労働時間、変形労働時間制の設定 | 特例措置を使っている顧問先と、その所定労働時間 |
年休取得日の賃金算定は、労基法第39条第9項で、平均賃金・所定労働時間働いた場合に支払われる通常の賃金・標準報酬月額の30分の1(労使協定が必要)の3つから選ぶ形になっています。報告書は、日給制・時給制の社員に平均賃金などの方法が使われると、計算上の額が大きく減ることがあると指摘しています(2026年10月時点・厚生労働省「『労働基準関係法制研究会』の報告書を公表します」)。仮に通常賃金方式に統一する改正になれば、顧問先ごとに給与計算の設定と就業規則の見直しが必要になるため、どの顧問先がどの方法を定めているかを、今のうちに一覧にしておくと安心です。
週44時間の特例措置は、商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業で、常時使用する労働者が10人未満の事業場に限り、法定労働時間を週44時間とする扱いです(2026年10月時点・厚生労働省「法定労働時間と割増賃金について教えてください。」)。撤廃が決まれば、これらの事業場も含めて全業種で法定労働時間が週40時間となり、小さな店舗・診療所・飲食店などで週44時間を前提に所定労働時間やシフトを組んでいる顧問先は、時間外労働の数え方が変わります。該当しそうな顧問先には、撤廃が決まった時点で最初に案内できるよう、台帳に印を付けておきます。
副業・兼業の割増賃金は、今は労働契約を結んだ順に所定労働時間を通算し、次に所定外労働が発生した順に通算するか、あらかじめ各事業場の労働時間の上限を決めておく管理モデルを使うかのどちらかで計算しており、報告書はこの運用が日々複雑だと指摘しています。通算が要らなくなれば割増賃金の計算は簡素化されますが、報告書は同時に、副業・兼業を行う労働者の健康確保にはこれまで以上に万全を尽くす必要があるとしています(2026年10月時点・厚生労働省「『労働基準関係法制研究会』の報告書を公表します」)。顧問先には「計算は楽になる可能性があるが、労働時間の把握はなくならない」と伝え、副業の申告の手続は残しておくよう勧めます。
03 ACTUALLY HAPPENING ③2026年10月に実際に施行されるのは「別の法律」 パートタイム・有期雇用労働法の施行規則・告示の改正。労基法そのものではない
一方で、2026年10月には実際に制度が変わる改正が施行されます。ただしこれは労働基準法の改正ではなく、「パートタイム・有期雇用労働法」(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の施行規則(省令)と告示(同一労働同一賃金ガイドライン・雇用管理の指針)の改正です。法律の条文ではなく、その下のルールが変わります。顧問先対応では、この法律の違いを明確に伝える必要があります。
📚 用語解説
パートタイム・有期雇用労働法:正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」。正社員とパート・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消(同一労働同一賃金)を目的とする法律で、労働基準法とは別の法律として定められている(出典: 厚生労働省)。2026年10月の改正は、この法律の施行規則と告示の改正で、労働基準法の条文は変わらない(2026年10月時点・山梨労働局「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります~令和8年10月1日施行~」)。
厚生労働省の公式情報によれば、2026年10月施行の改正内容は次の3つのポイントに整理されています。
📚 用語解説
同一労働同一賃金:同じ内容の仕事をしている労働者には、雇用形態(正社員・パート・有期雇用)にかかわらず同じ待遇を与えるべきという考え方。パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法にもとづき、正社員とパート・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差を禁止する規定として具体化されている(出典: 厚生労働省)。
3-1. 労基法以外で、2026年に施行された・施行される人事労務の法令改正
2026年10月のパートタイム・有期雇用労働者のルールの見直しのほかにも、2026年には労基法以外の法令改正が続いています。どれも労基法の改正ではありませんが、顧問先からは「法改正」とひとまとめに聞かれやすいため、施行日と対象の顧問先を一覧で持っておきます。
| 施行日 | 法令改正の内容 | 顧問先で確かめること |
|---|---|---|
| 2026年4月1日 | 被扶養者認定:労働条件通知書など、労働契約の内容が分かる書類に記載された賃金から見込まれる年間収入が130万円未満(年齢などにより基準額は異なる)で、ほかの収入が見込まれないかで判定する取扱いに(2026年10月時点・日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」) | 扶養に入れる家族の労働条件通知書の写しを、だれがどう集めるか |
| 2026年4月 | 年金制度改正法(令和7年法律第74号):在職老齢年金の支給停止基準額を、月51万円(2025年度)から65万円(2026年度)に引上げ(2026年10月時点・日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」) | 働きながら年金を受け取る社員への説明と、賃金の見直しの相談 |
| 2026年4月保険料から (5月に給与天引き) | 子ども・子育て支援金:被用者保険は標準報酬月額×支援金率(2026年度は国が示す一律の率で0.23%)で、基本的に支援金額の半分を企業が負担(2026年10月時点・こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」) | 給与計算の控除項目の設定と、給与明細への表示 |
| 2026年4月1日 | 改正労働安全衛生法:高年齢労働者の労災防止のための措置(作業環境の改善・作業の管理など)の努力義務化。フリーランスを含む個人事業者等の保護では、混在作業場所での元方事業者等の措置義務の対象拡大が2026年4月1日、個人事業者等自身への義務付けが2027年4月1日から(2026年10月時点・京都労働局「労働安全衛生法・作業環境測定法等改正の主なポイントについて」) | 高年齢労働者が多い現場と、フリーランスと同じ場所で作業する現場のある顧問先 |
| 2026年4月1日 | 改正女性活躍推進法:常時雇用する労働者が101人以上の事業主に、男女間賃金差異(男女の賃金の差異)と女性管理職比率(管理職に占める女性労働者の割合)の公表義務を拡大(2026年10月時点・富山労働局「ハラスメント対策・女性活躍推進に関する法改正について」)(2026年10月時点・福島労働局「【令和8年4月改正】女性活躍推進法 女性の職業生活における活躍に関する情報公表について」) | 101人以上の顧問先の公表項目と、公表の時期 |
| 2026年7月 | 障害者雇用促進法にもとづく民間企業の障害者法定雇用率を2.5%から2.7%に引上げ。障害者を雇用しなければならない民間企業の範囲は、従業員37.5人以上に(2026年10月時点・山梨労働局「障害者の法定雇用率について」)(2026年10月時点・大分労働局「令和8年7月より障害者の法定雇用率が2.7%に引き上げられます」) | 新たに雇用義務の対象に入る顧問先と、不足する人数 |
| 2026年10月1日 | 改正労働施策総合推進法:カスタマーハラスメント対策(事業主の雇用管理上の措置)の義務化(2026年10月時点・富山労働局「ハラスメント対策・女性活躍推進に関する法改正について」) | 接客・窓口・訪問の業務がある顧問先で、厚生労働省の指針に沿った措置を整えているか |
| 2026年10月 | 社会保険の適用拡大:短時間労働者の賃金要件(所定内賃金の月額8.8万円以上、いわゆる106万円の壁)を撤廃(2026年10月時点・厚生労働省「適用拡大 Q&A|社会保険適用拡大特設サイト」) | 週20時間以上で働くパートの資格取得の届出に漏れがないか |
第3章の本題と同じく、これらも労基法そのものの改正ではありません。顧問先への案内では、法令改正ごとに「どの法律の改正か」「施行日」「どの顧問先が対象か」を1行ずつ書き分け、労基法の大改正の話と混ぜないようにします。とくに子ども・子育て支援金と106万円の壁の撤廃は、給与計算と社会保険の手続に直接響きます。賃金要件がなくなっても、週の所定労働時間20時間以上などのほかの要件と企業規模の要件は残るため、「月8.8万円未満なら加入しない」という古い判定のまま手続を止めている顧問先がないか、施行月の前後の資格取得の届出で確かめておきます。
04 PITFALLS 顧問先対応で混同しやすいポイント 3つの話を一括りにすると、誤った案内につながる
これらの混同が起きる最大の理由は、「労働基準法」という言葉を含む3つの異なる話題が、同じタイミングでニュースやネット記事に流れていることです。顧問先は検索結果やニュースの見出しだけを見て質問してくるため、事務所側がこの3層を正確に整理して答えられるかどうかが、信頼につながります。
4-1. 間違えた案内をした場合に起きること
たとえば「2026年10月から労基法が変わるので対応が必要です」という不正確な案内を顧問先にしてしまうと、後になって「実は別の法律の話だった」と訂正する必要が生じ、事務所の説明に対する信頼が下がるおそれがあります。逆に「大改正は見送りなので今は何もしなくていい」とだけ伝えてしまうと、実際に施行されるパート・有期雇用労働法の施行規則・告示の改正への対応が後回しになり、顧問先が対応漏れを起こすリスクもあります。
いずれのケースも、3つの話を正確に切り分けて説明できるかどうかが分かれ目です。情報が混在しやすいテーマだからこそ、毎回同じ精度で整理して伝える仕組みの有無が、事務所ごとの対応力の差になります。
4-2. 確定事実・決まった運用変更・検討中・未確定を分けて伝える
3つの話の混同を防ぐには、顧問先に伝える情報を、確定の度合いで区分してから書くのが確実です。2026年10月時点では、次の4つに分けられます。
| 区分 | 中身 | 顧問先への伝え方 |
|---|---|---|
| 施行済みの確定事実 | 第1章の改正(年5日の時季指定、上限規制、月60時間超の割増率、36協定届の新様式、2024年4月の改正など) | 運用の証拠(管理簿・協定届・給与計算)を確認する |
| 施行日が決まった改正 | 2026年10月施行のパートタイム・有期雇用労働法の施行規則・告示の改正(第3章) | 規程と労働条件の明示を直す期限として案内する |
| 決まった運用変更 | 労基署の指導の見直し(第2章 2-5) | 法律は変わっていないと必ず添える |
| 検討中・未確定 | 第2章の主要論点(連続勤務、法定休日、勤務間インターバル、副業・兼業、裁量労働制など) | 「検討中」と明記し、日付を書かない |
議論動向のキャッチアップは、一次情報に絞ると手間が減ります。見るのは、厚労省の労働政策審議会労働条件分科会の資料と議事録、大臣会見概要、閣議決定された骨太方針の3つです。報道で新しい話が出たときも、分科会の資料で同じ内容が確かめられるまでは、顧問先には「報道ベースの情報」として扱います。事務所内では、確かめた最新動向を日付と出典つきで1か所に記録し、職員ごとに説明が食い違わないようにします。
検討中の論点が法律になるまでには、分科会での取りまとめ、法案の国会提出と成立、省令・指針の整備という段階があります。改正確定後に施行日と経過措置を公式ページで確かめてから、顧問先ごとの周知文と規程の改正案に取りかかる、という順番を事務所の決まりにしておくと、先走った案内を防げます。
4-3. 顧問先のタイプ別に、今検討すべき実務対応とチェックリスト
検討中の論点は、顧問先の働き方のタイプによって影響の大きさが変わります。いま制度を変える必要はありませんが、どの顧問先に影響が出そうかを把握しておくと、改正確定後の案内の順番を決められます。
| 顧問先のタイプ | 影響しうる論点 | 今検討すべき実務対応 |
|---|---|---|
| シフト制・交替制で休日が不規則 | 連続勤務、法定休日の特定、勤務間インターバル | 連続勤務の最長日数と、終業から次の始業までの時間を実績から出しておく |
| フレックスタイム制・テレワーク・在宅勤務を導入 | 部分フレックス、テレワーク向けの労働時間制度、業務時間外の連絡対応 | 在宅時の始業・終業の記録方法と、時間外の連絡の実態を確かめる |
| 副業・兼業を認めている | 割増賃金計算のための労働時間通算、健康確保 | 副業の申告の手続と、副業先の労働時間の把握の方法を確かめる |
| 裁量労働制を導入 | 裁量労働制の対象の見直し | 2024年4月の手続の見直しに沿って運用されているかを確かめる |
| 特別条項で繁忙期を回している | 労基署指導の見直し(法律の上限は不変) | 特別条項の発動回数と2〜6か月平均を毎月確かめる |
どのタイプでも共通するのが、勤怠データです。クラウドの勤怠管理システムを使っている顧問先であれば、連続勤務日数や勤務間の休息時間を集計できる設定になっているかを確かめ、紙やエクセルで管理している顧問先であれば、少なくとも始業・終業・休日の記録を毎月同じ形で残してもらいます。データの蓄積があれば、改正確定後に「この顧問先で何人が対象になるか」をすぐに試算できます。顧問先の人事労務担当者と一緒に、次のチェックリストで今の状態を確かめておくとよいでしょう。
顧問先の担当者が自社の状況を自分で確かめられるよう、チェックリストは事務所の名前で配り、回答を顧問先ごとに残しておきます。論点が確定したときに、その回答を見直すだけで影響の大きい顧問先から案内できるようになります。
4-4. 改正が確定したら、就業規則・雇用契約書と業務効率を同時に見直す
検討中の論点が法律になり施行日が決まったら、顧問先で行うことは大きく分けて2つです。1つは就業規則と、雇用契約書・労働条件通知書のひな形の見直し、もう1つは時間外労働や休日出勤を生んでいる業務効率の見直しです。どちらかが欠けると、規程と実態がずれたまま労基法違反の状態が残ったり、労使のトラブルにつながったりします。
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場では作成と届出が必要で、変更した場合も、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見書を添えて所轄の労働基準監督署長に届け出ます(2026年10月時点・栃木労働局「就業規則の作成・変更・届出の義務(第89条、第90条、第92条)」)。規程を変えたら、同じ内容を雇用契約書・労働条件通知書のひな形にも反映し、社員への周知までを1つの流れにしておくと、書類どうしの食い違いによるトラブルを回避できます。
業務効率の見直しは、法改正への対応というより、労働時間管理を続けるための土台です。連続勤務の上限や勤務間インターバルのように休み方を決める論点が決まった場合、業務量が特定の社員に偏ったままでは、シフトを組み直しても上限に届いてしまいます。顧問先の勤怠データから、残業や休日出勤が集中している社員・部署を先に洗い出しておくと、改正確定後の準備を万全に進められます。
05 THE LIMITS 事務所の手作業では、この「情報の整理と周知」に限界がある 法改正情報を追い続けることと、顧問先ごとに正確に伝えることは別の作業
こうした情報整理と周知文書の作成を、顧問先が増えるたびに人手だけで繰り返すと、最新情報への更新が後手に回ったり、顧問先ごとの個別事情を反映した説明が作れなかったりするリスクが高まります。次の章では、この情報整理と周知文書作成をAIに渡す方法を説明します。
06 AUTOMATE THE WORK 【核心】法改正の周知文書作成をAIで「無人で回る仕組み」にする 効率化ではなく自動化。顧問先ごとの周知文書を自動生成する
6-1. 「AIに聞く」と「AIが周知文書を作る」は別物
AIに「2026年10月のパート・有期法改正の内容を教えて」と聞くのは効率化です。調べる時間が短くなるだけで、顧問先ごとに文書を作る作業自体は人間が続けることになります。
一方、Claude Code/Codexで構築するのは自動化です。「厚生労働省の公式情報を定期的に確認し、法改正の最新状況を要約し、顧問先ごとの業種・雇用形態の構成データと組み合わせて、個社別の周知文書・説明資料を自動生成する」という流れを設計しておけば、審議会の議論が進んで情報が更新されても、担当者が毎回ゼロから資料を作り直す必要がなくなります。
📚 用語解説
Claude Code/Codex:Claude CodeはAnthropic社、CodexはOpenAI社が提供するAIエージェント。指示を受けてデータの読み込み・集計・突合・判定・文書作成といった作業そのものを実行できる。プログラミング不要で、日本語の指示だけで業務の仕組みを構築できるため、非エンジニアのバックオフィス担当者による業務自動化にも使われている。
6-2. Claude Code/Codexに任せられる作業
| これまで人間がやっていた作業 | Claude Code/Codexに任せた後 |
|---|---|
| 複数の情報源から法改正の動向を手作業で収集 | 公式情報を定期的に自動収集し、最新状況を要約 |
| 顧問先ごとに影響の大きさを個別に判断 | パート・有期雇用労働者比率等のデータから影響度を自動判定 |
| 顧問先ごとに周知文書・説明資料を手作業で作成 | 個社別にカスタマイズした説明資料を自動生成 |
| 情報更新のたびに資料を作り直す | 最新情報が出るたびに差分を自動反映 |
| 就業規則・賃金規程の見直しが必要な箇所を個別に洗い出す | 規程文言と改正内容を自動で突合し、見直し候補箇所を抽出 |
6-3. 社労士法の独占業務との線引き
就業規則・賃金規程の改定案の最終作成や、顧問先への法的な助言(社労士法上の2号・3号業務)は、先生方が行う業務として変わりません。AIが担うのは、その前段にある公式情報の収集・要約、顧問先データとの突合、説明資料の下書き作成までの事務作業です。最終的な助言内容の確認と、顧問先への案内の実行は、必ず事務所側に残ります。
07 BUILD OR DELEGATE 増員・外注・自作では、情報整理と周知文書作成は片づかない 4つの選択肢のうち3つは、事務所の悩みを別の悩みに置き換えるだけ
| 選択肢 | よくある期待 | 実際に行き詰まる所 | 判定 |
|---|---|---|---|
| ①職員を増やす | 人手が増えれば情報収集も周知文書作成も追いつく | 情報源の分散と更新頻度に対して、増員だけでは追いきれない | ❌ |
| ②従来型の外注・BPO | 事務所の手を離せる | 顧問先ごとの業種・雇用形態データを外注先に伝える説明コストが残る | ❌ |
| ③事務所でAIを自作する | ツールを買えば自動化できる | 公式情報の収集先・要約ロジックの検証を自分たちで確立する必要がある | ❌ |
| ④AI社員AIKATAに任せる | 情報整理と周知文書作成をまるごと預けられる | (該当なし) | ✅ |
08 WHAT IS AIKATA AI社員AIKATAとは——事務所の事務作業を丸ごと受託するサービス 増員・外注・自作のどの壁にも引っかからない、4つめの選択肢
AI社員AIKATA(AI社員AIKATAを運営する弊社・株式会社GENAI)は、給与計算・勤怠の集計・入退社手続きの書類の下準備・法改正の周知文書の下書き作成・帳票の作成・顧問先への資料回収や一次対応など、職員がパソコンで行っている事務作業を、AIと人の二重体制で丸ごと受託する業務代行サービスです。
仕組みの構築・運用はAIKATA側が行うため、事務所にAIの知識は不要です。無料相談は60分・オンライン(Google Meet)で、業務の棚卸しと、どこまで任せられるかの整理を行います。契約の義務はありません。全国対応で、NDAを締結し、給与・人事のデータの受け渡し・保管ルールは事務所の規程に合わせて個別に決めます。料金は月額の定額制で、業務量が増えても料金は変わりません。
09 COMPARISON & CONCLUSION 残る道は「作業そのものを任せる」だけ 手作業・ソフトの乗り換え・AIKATA、3つを並べて比較する
| 手作業のまま | ソフトの追加・乗り換え | AIKATAに任せる | |
|---|---|---|---|
| 情報更新への追随 | ❌ 都度人手で確認・作り直し | △ 入力は楽になるが収集・判断は残る | ✅ 更新時に自動で差分反映 |
| 顧問先ごとの個別対応 | △ 職員の頭の中にある | △ ソフトの設定で一部吸収 | ✅ 業種・雇用形態データにもとづき自動カスタマイズ |
| 顧問先への負担 | ✅ ソフト変更なし | ❌ ソフトの乗り換えを依頼する必要あり | ✅ いまのソフトのまま変更不要 |
| 職員の採用・教育 | ❌ 法改正ごとに知識更新が必要 | △ 操作研修は必要 | ✅ 事務所にAIの知識は不要 |
| 社労士法の線引き | ✅ 全部事務所が行うので明確 | ✅ 明確 | ✅ 1号・2号・3号業務は事務所に残し、事務作業のみ受託 |
9-1. AI社員AIKATAが選ばれる5つの理由
増員・外注・自作・ソフトの乗り換えは、どれも事務所が人か仕組みを抱え続けることになります。作業そのものを手放せる道は、AIKATAに任せることだけです。法改正の情報整理で仕組みを作れば、同じ考え方を傷病手当金の突合・社会保険の加入判定といった他の定型業務にも広げていけます。
労働政策審議会での議論は今後も続き、2027年以降に労基法の大規模改正が実際に国会へ提出される可能性があります。そのときに備えて、今のうちに情報整理と顧問先への周知の仕組みを作っておくことが、次の改正対応をスムーズにする一番の近道です。
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法改正の情報整理・顧問先向け資料の下書き作成は、傷病手当金の突合や社会保険の加入判定と同じく、公式情報と顧問先データを組み合わせて作る事務作業です。
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顧問先からの質問に即答できる体制を整えておくことは、法改正そのものへの対応力だけでなく、事務所全体への信頼にもつながります。
職員を増やす・外注する・AIを自作する・ソフトを替える——どの道を選んでも、集計・入力・確認の作業か、それを回す人と仕組みが事務所に残り続けます。
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よくある質問
Q. 労働基準法は2026年に大きく改正されますか?
A. 約40年ぶりとされる労働基準法の大規模改正は、当初2026年の通常国会に法案が提出される見通しでしたが、2025年12月26日に厚生労働大臣が「2026年の通常国会での法案提出は現在のところ考えていない」と表明し、見送られました。議論自体は2026年7月の「骨太の方針2026」を受けて、同年夏以降に労働政策審議会で再開されており、2027年以降の国会提出・段階的施行が有力視されています。
Q. 2026年10月に施行される改正は何ですか?
A. 2026年10月に施行されるのは、労働基準法の改正ではなく「パートタイム・有期雇用労働法」の施行規則と告示の改正です。正社員とパート・有期雇用労働者との待遇差について、労働条件明示事項の追加、同一労働同一賃金ガイドラインの改正、雇用管理上の措置の見直しという3つのポイントが変わります。
Q. 労働基準法の改正で、すでに施行されている内容は何ですか?
A. 2019年4月から段階的に施行された働き方改革関連法により、年次有給休暇の取得義務化(年5日以上)、時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)、高度プロフェッショナル制度の創設などが実施されています。また2023年4月からは、中小企業にも月60時間を超える時間外労働の割増賃金率50%の適用が始まっています。
Q. 勤務間インターバル制度は義務化されましたか?
A. 現時点では義務化されていません。勤務間インターバル制度は労働時間等設定改善法にもとづく努力義務(企業の努力目標)であり、義務規定に強化するかどうかは、見送られた労働基準法の大規模改正の論点の一つとして現在議論されている段階です。
Q. 「労基法改正は見送り」なら、顧問先は何も対応しなくていいですか?
A. 大規模改正の法案提出は見送られましたが、議論自体は労働政策審議会で継続しており、2027年以降に国会へ提出される可能性があります。また、2026年10月施行のパートタイム・有期雇用労働法の施行規則・告示の改正は見送りの対象ではなく実際に施行されるため、パート・有期雇用労働者がいる顧問先では、賃金規程・就業規則の確認等の対応が必要です。
Q. 2026年10月のパートタイム・有期雇用労働者のルールの改正は、どの顧問先にとくに影響がありますか?
A. パート・有期雇用の従業員を雇用している顧問先に影響があります。とくに賞与・退職手当・家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇などを正社員にのみ適用している場合、条件を満たすパート・有期雇用労働者にも同一の支給・付与が必要になるケースがあるため、賃金規程・就業規則の点検が求められます。
Q. 社労士事務所が法改正の情報整理や周知文書作成をAIに任せても、社労士法上問題ありませんか?
A. 就業規則・賃金規程の改定案の最終作成や、顧問先への法的な助言自体は、社労士法上の業務であり、先生方が行う業務として変わりません。AI社員AIKATAのようなサービスに任せる場合も、AIが担うのは公式情報の収集・要約、顧問先データとの突合、説明資料の下書き作成までの事務作業で、最終的な助言内容の確認と顧問先への案内の実行は、常に事務所側が行います。
Q. 今使っている給与ソフトや勤怠システムのままでAI社員AIKATAを利用できますか?
A. 利用できます。AI社員AIKATAは特定のソフトに限定せず、いま事務所が使っている給与ソフトや勤怠システムをそのまま使い、画面操作を含めて自動化する仕組みです。顧問先にソフトの乗り換えを依頼する必要はなく、顧問先ごとの業種・雇用形態構成などの個別事情を登録して処理します。
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