【2026年11月最新】試用期間の社会保険は加入必須?入社日からの加入条件・追徴金と遡及のリスクと、社労士事務所が顧問先の入社手続きをAIで自動化する方法
「顧問先の新入社員が試用期間中なので、社会保険の手続きは本採用になってからでいいですか」「入社して2週間で辞めたので、資格取得届は出さなくていいですよね」——入社手続きを預かる社労士事務所では、こうした質問が顧問先から毎月のように届きます。
結論から言うと、試用期間であることを理由に社会保険の加入を遅らせることはできません。日本年金機構の案内でも、被保険者になるかどうかは「事業所に常用的に使用されているか」で判断され、試用期間中に賃金が支払われていれば使用関係は認められるとされています。つまり、健康保険・厚生年金保険の加入義務は、試用期間の有無ではなく入社日(使用開始日)から生じます。雇用保険も、週の所定労働時間などの要件を満たせば試用期間の初日から対象で、労災保険はそもそも被保険者という考え方がなく、働く人全員が対象です。
この記事では、試用期間と社会保険の関係を、健康保険・厚生年金保険、雇用保険、労災保険に分けて整理します。あわせて、加入しなかった場合の追徴金・延滞金・遡及の流れや、「転職先で加入させてもらえない」と相談された場合の対応も、公式情報にもとづいて説明します。後半では、顧問先ごとに違う試用期間の運用と入社手続きの確認を、AI社員AIKATAに任せて回す方法を紹介します。
01 WHAT IS PROBATION 試用期間とは?社会保険の前提になる法的な位置づけ 「お試し」でも労働契約は成立している。ここを押さえると加入義務の理由が見える
社会保険の話に入る前に、顧問先に説明するときの前提として、試用期間とは何かを整理しておきます。試用期間とは、採用した人の適性や能力を見極めるために、入社後の一定期間を設けるものです。法律で期間の上限や長さが決まっているわけではなく、就業規則や雇用契約書で会社が定めます。実務では3か月、長くても6か月程度に設定している会社が多く見られます。
📚 用語解説
試用期間(解約権留保付労働契約):採用後に適性を見極めるために設ける期間。この間も労働契約は成立しており、法的には「解約権留保付労働契約」と解釈されている。本採用拒否(試用期間満了時の契約終了)は通常の解雇より広い裁量が認められるが、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と認められる場合に限られる(労働契約法第16条の考え方)。
1-1. 試用期間中は「本採用前」でも労働契約が始まっている
ここで大切なのは、試用期間中も労働契約は入社日から有効に成立しているという点です。会社と従業員の間には、指揮命令と賃金の支払いという使用関係がすでにあります。社会保険の被保険者になるかどうかは、契約書の書き方や「仮採用」「見習い」といった呼び名ではなく、この使用関係の実態で判断されます。
顧問先の人事担当者は「本採用の辞令を出した日から正社員」と考えがちですが、社会保険の世界では辞令の日は関係ありません。顧問先に説明するときは、「試用期間は人事評価上の区分であって、社会保険の加入時期を決めるものではない」と一言で伝えると、誤解が早く解けます。
1-2. 試用期間中の給料はどうなる?最低賃金との関係
試用期間中の給料(給与)について、法令に「本採用より低くしてよい」「同額にしなければならない」といった定めはなく、会社が就業規則や雇用契約で決めます。ただし、試用期間中も労働契約である以上、地域別最低賃金を下回ってはいけません。社会保険の観点で事務所が注意したいのは、試用期間中の給与額が、資格取得時の標準報酬月額の決定の基礎になる点です。
資格取得時の標準報酬月額は、入社時に見込まれる報酬(基本給・諸手当など固定的な賃金と、残業代などの非固定的な賃金)をもとに決まります。試用期間中の給与で届出を出し、本採用後に昇給した場合は、固定的賃金の変動として随時改定(月額変更届)の対象になる可能性があります。随時改定は、固定的賃金が変動した月から3か月間の報酬の平均が、現在の標準報酬月額と比べて2等級以上ずれた場合に必要になる手続きです。試用期間明けの昇給がある顧問先では、この確認を忘れないようにします。
試用期間から本採用への切り替えで基本給が上がる顧問先では、昇給月から3か月分の報酬を見て、2等級以上の差が出るかを確認します。差が出るのに届出を出さないと、標準報酬月額が実態と合わないまま保険料が計算され続けます。試用期間の終了日を、顧問先の入社管理表に必ず載せておきましょう。
1-3. 試用期間中の解雇・退職でも手続きは必要
試用期間中に退職したり、会社が本採用を見送ったりする場合でも、いったん加入した社会保険は、退職の手続きで資格を喪失させる必要があります。労働基準法では、試用期間中の者でも、14日を超えて引き続き使用されるようになれば、解雇の際に原則として予告(または予告手当)が必要になります。入社から14日以内の退職であっても、加入の手続きを省略してよいという意味ではありません。
「すぐ辞めたから届出は不要」と顧問先が判断して届出を出さないと、本人が転職先で別の健康保険に入るときに、前の会社の加入状況が整理されておらず、手続きが止まる原因になります。入社日に取得届、退職日の翌日付で喪失届、という流れを、試用期間の長短にかかわらず守ってもらうよう案内します。
02 HEALTH & PENSION 試用期間中の健康保険・厚生年金保険の加入条件 事業所側の条件と、従業員側の条件を分けて判定する
健康保険・厚生年金保険の加入は、「事業所が適用事業所か」と「その従業員が被保険者の要件を満たすか」の2段階で判定します。試用期間中でも、この2つの条件を満たしていれば、入社日から加入義務が生じます。
2-1. 事業所側の条件:適用事業所かどうか
日本年金機構の案内によれば、株式会社などの法人の事業所は、従業員がいれば規模にかかわらず強制適用事業所になります。代表者1人だけの法人も含まれます。個人事業所は、常時5人以上の従業員を使用する事業所が強制適用の対象です。ただし、農林水産業やサービス業の一部など、個人事業では適用除外の業種があります。適用除外の個人事業所でも、従業員の半数以上の同意を得て認可を受ければ、任意適用事業所として加入できます。
📚 用語解説
適用事業所:健康保険・厚生年金保険に加入する義務のある事業所(強制適用事業所)と、申請により認可を受けて加入する事業所(任意適用事業所)の総称。個々の従業員が保険に入る前提として、まず事業所が適用事業所になっている必要がある。事業所の適用区分の詳しい整理は、あわせて読みたい記事「社会保険の加入条件とは?」で解説している。
事業所の適用区分は、前の記事『社会保険の加入条件とは?50人以下の事業所・パートの4要件』で詳しく整理しています。顧問先が個人事業から法人化した直後は、従業員数にかかわらず強制適用に切り替わる点も、あわせて確認してください。
2-2. 従業員側の条件:常用的使用関係と4分の3基準
従業員が被保険者になるかどうかは、適用事業所に常用的に使用されているかで判断します。日本年金機構の案内では、雇用契約書の有無は問わず、事業主の指揮命令のもとで労務を提供し、賃金を受けていれば使用関係があると扱われます。試用期間中も賃金が支払われている以上、この要件は満たされます。
パートや契約社員など、正社員より短い時間で働く人については、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者になります。たとえば正社員の週所定労働時間が40時間の事業所なら、週30時間以上が目安です。この判定は、試用期間であるかどうかとは無関係に、入社日の時点の所定労働条件で行います。
📚 用語解説
4分の3基準:同じ事業所で同種の業務に従事する通常の労働者と比べて、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、ともに4分の3以上であれば被保険者になるという判定基準。名称がパート・アルバイト・契約社員であっても、この基準を満たせば加入対象になる(出典: 日本年金機構)。
2-2の補足. 勤務日数・時間が75%以上かどうかの確かめ方
4分の3は割合に直すと75%です。顧問先のパートが試用期間中の社会保険加入の対象かどうかは、勤務日数と勤務時間の両方が、同じ事業所の正社員の75%以上かで確かめます。たとえば正社員が月21日・週40時間の事業所なら、月に約16日以上かつ週30時間以上が目安です。どちらか一方でも下回れば4分の3基準は満たさないため、次に示す短時間労働者の要件で改めて判定します。労働条件通知書の「所定労働日数」と「始業・終業時刻」の欄を見れば、入社日の時点で判定できます。
試用期間でも社会保険加入は必須、というのは、この判定を満たす人の場合の話です。判定で対象外になった人まで無理に加入させる必要はありませんが、判定の根拠は、後から年金事務所に聞かれても説明できるよう、入社管理表に残しておきます。
2-3. 4分の3未満でも加入対象になる短時間労働者
4分の3基準を満たさない短時間労働者であっても、特定適用事業所(または任意特定適用事業所)に勤務していれば、週の所定労働時間が20時間以上であること、学生でないことなどの要件で被保険者になります。企業規模要件(被保険者数)は、日本年金機構の公式ページによれば令和9年(2027年)9月までは51人以上で、令和9年10月から36人以上、令和11年10月から21人以上、令和14年10月から11人以上と、段階的に引き下げられる予定です。
なお、従来の要件にあった「賃金月額8.8万円以上」について、日本年金機構の現行ページでは、一般の短時間労働者の要件としては掲載されていません。最低賃金の減額特例許可を受けていて、所定内賃金が月額8.8万円未満の人は「特定減額特例対象者」として原則対象外となり、事業主を通じた申し出で加入できる扱いと整理されています。顧問先に案内するときは、公式ページの最新の記載で確認します。
試用期間中のパートの判定で大切なのは、試用期間中の所定労働時間と、本採用後の所定労働時間が違う場合の扱いです。たとえば試用期間は短時間勤務で、本採用から週30時間になるという契約の場合、加入義務は「被保険者の要件を満たした時点」から生じます。要件が変わる日(所定労働時間が増える日)を、入社管理表に載せておくと見落としません。
2-4. 加入手続きの提出期限と、保険料はいつから発生するか
顧問先が試用期間を理由に加入手続きを後回しにすると、期限を過ぎた状態で事務所に相談が来ます。入社の連絡を受けた時点で、期限を逆算して動くことが大切です。
健康保険・厚生年金保険の資格取得届は、事実が発生した日(資格取得日)から5日以内に、年金事務所(または事務センター)へ提出するのが原則です。試用期間中であっても、この期限は変わりません。電子申請を使う場合も、期限の考え方は同じです。電子申請の進め方は、あわせて読みたい記事『e-Govとは?電子申請義務化と使い方』で整理しています。
保険料は、資格を取得した月から発生します。月の途中で入社した場合も、その月分の保険料が必要になるのが原則です(月末時点で資格を有している月分が対象になるため、資格喪失の日が月末付近かどうかで扱いが分かれる点は、日本年金機構の案内で確認してください)。試用期間中の社員の本人負担分も、通常の社員と同じく給与から控除する運用になります。
| 確認項目 | 試用期間中の扱い | 事務所が確認すること |
|---|---|---|
| 加入義務が生じる日 | 入社日(使用開始日)。本採用日ではない | 入社日と、顧問先が把握している「加入日」のずれ |
| 事業所の条件 | 法人なら規模を問わず強制適用/個人は常時5人以上(業種に例外) | 法人成りや従業員数の変動で適用区分が変わっていないか |
| パート・短時間 | 4分の3基準、または短時間労働者の要件で判定 | 試用期間中と本採用後で所定労働時間が違わないか |
| 提出期限 | 資格取得日から5日以内 | 入社日の連絡が事務所に届く時期 |
| 標準報酬月額 | 資格取得時の見込み報酬で決定 | 本採用後の昇給で随時改定の対象にならないか |
03 EMPLOYMENT & WORKERS COMP 雇用保険・労災保険と、試用期間中でも「対象外」になるケース 労働保険は、健康保険・厚生年金保険とは別の基準で判定する
3-1. 雇用保険:週20時間以上かつ31日以上の雇用見込み
雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがある人が被保険者になるのが原則です(昼間学生など、一部は対象外)。試用期間があっても、本採用を前提に採用している場合は、試用期間を含めた雇用の見込みで判断します。つまり、試用期間が1か月以内に設定されていても、その後も引き続き雇用する前提であれば、31日以上の雇用見込みがあると扱われます。
雇用保険の資格取得届は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに、公共職業安定所(ハローワーク)へ提出するのが原則です。健康保険・厚生年金保険の「5日以内」と期限が違うため、入社連絡を受けた時点で、2つの期限を別々に管理する必要があります。
また、雇用保険の適用基準は今後変わる予定です。厚生労働省の資料では、令和10年(2028年)10月1日の施行で、被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に引き下げ、適用対象を広げるとされています。短時間勤務の従業員が多い顧問先では、いまのうちから入社管理表に週所定労働時間の項目を持っておくと、施行時の再判定が楽になります。
📚 用語解説
雇用保険被保険者番号:雇用保険の被保険者一人ひとりに付く番号。転職しても引き継がれるため、前の勤務先での加入歴の確認に使う。入社時に本人から番号を聞き取れるかどうかで、資格取得届の作成の手間が変わる。確認方法は、あわせて読みたい記事『雇用保険被保険者番号とは?確認方法や人事手続き』で解説している。
3-2. 労災保険:試用期間どころか1日だけでも対象
労災保険には、健康保険や雇用保険のような「被保険者」という考え方がありません。事業所で働いて賃金を受ける人は、正社員・パート・アルバイト・試用期間中の人を問わず、労災保険の対象です。ですから、試用期間中の従業員が業務中に負傷した場合も、労災保険の給付の対象になります。事業主が保険関係の手続き(保険関係成立届など)を行っていなかったとしても、労働者が給付を受けられなくなるわけではありません。
顧問先が試用期間中の従業員の労災申請を渋るケースがあります。労災保険の対象に試用期間の区別はなく、会社が申請に協力しない場合でも、労働者は労働基準監督署に直接請求できます。事業主の手続き漏れが後で発覚した場合、事業主に費用徴収が行われる場合もあるため、顧問先には早めに保険関係の確認を促します。
3-3. 試用期間中でも加入対象外になるケース
社会保険加入対象外の条件を整理すると、試用期間の有無ではなく、雇用の形(期間・時間・業務の性質)で決まることが分かります。試用期間中であっても、制度の適用除外に当たる場合は、被保険者になりません。日本年金機構の案内によれば、健康保険・厚生年金保険の適用除外に当たるのは、主に次のような人です。
| 区分 | 適用除外の内容 | 被保険者になる場合 |
|---|---|---|
| 日々雇い入れられる人 | 1か月を超えない範囲で日々雇われる人 | 1か月を超えて引き続き使用された場合は、その時点から被保険者 |
| 2か月以内の期間を定めて使用される人 | 契約期間が2か月以内 | 所定の期間を超えて引き続き使用される見込みになった場合は、使用開始時から被保険者 |
| 季節的業務に使用される人 | 4か月以内の季節的業務 | 当初から継続して4か月を超えて使用される見込みがある場合は、使用開始時から被保険者 |
| 臨時的事業の事業所に使用される人 | 6か月以内の臨時的事業 | 当初から継続して6か月を超えて使用される見込みがある場合は、使用開始時から被保険者 |
| 所在地が一定しない事業所に使用される人 | 事業所の所在地が一定しない場合 | 被保険者にならない |
ここで間違えやすいのが、「2か月以内の期間を定めて使用される人」の読み方です。これは契約期間そのものが2か月以内と定められている短期の有期雇用のことで、「試用期間が2か月以内の本採用前提の雇用」とは別です。試用期間は、本採用を前提にした雇用の一部であり、試用期間を短くしても適用除外にはなりません。「試用期間を2か月以内にすれば社会保険に入らなくてよい」という話は誤りで、顧問先がこの誤解をしている場合は、事務所から明確に訂正する必要があります。
保険料を抑える目的で、試用期間や有期契約の期間だけを短く設定しても、実態として引き続き使用される見込みがある場合は、使用開始時から被保険者になります。契約書上の文言ではなく、実際の使用の見込みで判断される点を、顧問先に必ず伝えてください。
04 RISKS 加入しなかった場合の追徴金・延滞金・遡及と、転職先で加入できない時の対応 「知らなかった」では済まない、遡及徴収の重さと対応の順番
4-1. 追徴金(遡及徴収):最大2年分をさかのぼる
加入条件を満たしているのに社会保険に加入させていなかった場合、年金事務所の調査などで発覚すると、加入すべきだった時点にさかのぼって資格を取得する扱い(遡及適用)になり、保険料を徴収されます。保険料の徴収権の時効は2年とされているため、さかのぼれるのは原則として最大2年分です。事業主負担分に加えて、本来は毎月の給与から預かるはずだった従業員負担分も、事業主がまとめて納めることになります。
従業員負担分は、本来の月に給与から控除していなかった分を、後から全額まとめて従業員に請求するのは難しいのが実情です。結果として、顧問先が従業員負担分まで立て替える形になり、負担が大きくなります。これが、「試用期間が終わってから手続きをすればいい」という誤解の代償です。
4-2. 延滞金:納期限の翌日から日数に応じて加算
保険料を納期限までに納めなかった場合は、納期限の翌日から納付日の前日までの日数に応じて、延滞金が加算されます。延滞金の率は、年ごとに見直される特例基準割合などをもとに決まるため、金額を計算するときは日本年金機構の案内で最新の率を確認します。遡及適用の場合、過去の月分がまとめて納期限を過ぎている扱いになるため、延滞金が加算されやすいことも、顧問先に伝えておきます。
4-3. 悪質な場合の罰則
正当な理由なく被保険者の資格取得の届出をしない場合などは、事業主に対して6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される規定があります(健康保険法・厚生年金保険法の罰則規定。条文は e-Gov 法令検索で確認できます)。雇用保険法にも、届出をしない場合などの罰則規定があります。実務上は、まず年金事務所やハローワークの調査・指導で是正の機会が与えられるケースが大半ですが、「指摘されるまで放置」が許されるという意味ではありません。
4-4. 遡及適用された場合の流れ
調査や本人からの申し出で未加入が発覚した場合の流れは、おおむね次のようになります。事務所が顧問先から相談を受けたときに、順番を示せるようにしておくと、顧問先の動揺を抑えられます。
このうち、事務所の作業が大きく増えるのが「標準報酬月額の決定・保険料の再計算」と「従業員への説明と負担分の精算」です。過去の月ごとの報酬を集め直し、月ごとの保険料を算出し、本人負担分の精算方法を顧問先と決める必要があります。遡及した期間に傷病手当金の請求など、既に別の健康保険で給付を受けていた場合の調整が絡むと、さらに複雑になります。傷病手当金の扱いは、あわせて読みたい記事『傷病手当金の申請書』も参考にしてください。
4-5. 転職先で社会保険に加入できない場合は要注意——相談されたときの対応
事務所には、顧問先の従業員から直接、あるいは顧問先を通じて「転職先で試用期間を理由に社会保険に入れてもらえない」という相談が来ることがあります。先生方が対応するときの順番は、次のように整理できます。
社会保険の加入は法律で決まっているため、従業員が「入りたくない」と言っても、要件を満たす限り加入義務は免除されません。逆に、会社と従業員が「社会保険に入らない」と合意していても、その合意は効力を持ちません。顧問先からこの種の相談を受けたときは、きちんと断る根拠を示します。
4-6. 未加入を防ぐ対処方法と防止策(入社チェックシートのテンプレート項目)
遡及が起きてから対処するよりも、起きない仕組みを顧問先と作るほうが、事務所の負担は軽くなります。すでに未加入が見つかった場合の対処方法は、4-4の流れで進めます。そのうえで、同じことを繰り返さないための防止策として、入社時に使うチェックシート(テンプレート)に次の項目を入れておくことをおすすめします。
このチェックシートを、顧問先の入社連絡の時点で必ず埋めてもらう運用にすれば、確認漏れの大半は防げます。あわせて、試用期間の終了日と随時改定の確認月、算定基礎届の時期、年度更新の時期を1枚に並べた年間業務カレンダーを顧問先ごとに持っておくと、年間を通した見落としが減ります。
05 THE LIMITS 入社手続きの確認を人の手で回し続けるのは、事務所の限界を超えやすい 制度は単純でも、顧問先の数と入社の頻度が、確認の抜けを生む
ここまで見てきたように、試用期間の社会保険のルール自体は複雑ではありません。ところが実務では、次のような理由で、確認の抜けや期限切れが起きやすくなります。
こうした状況に対して、「チェックリストを作る」「顧問先に入社連絡のルールを徹底してもらう」という対策は、一時的には効きます。しかし顧問先が増え、入社の頻度が上がるほど、チェックそのものを忘れるリスクも積み上がります。ソフトを替えなくても、作業そのものを任せる道がある——次の章で、その考え方を説明します。
06 AUTOMATE THE WORK 【核心】入社手続きの加入判定を、AIで「無人で回る仕組み」にする 効率化ではなく自動化。入社連絡が来た時点で、判定と下書きが動き出す
6-1. 「AIに聞く」と「AIが毎回回す」は別物
AIに「この人は試用期間でも社会保険に入る必要がありますか」と質問するのは効率化です。1件ごとの調べ物は速くなりますが、顧問先全社・入社者全員の判定を毎回確認する構造は変わりません。
Claude Code/Codexで構築するのは自動化です。「顧問先から入社連絡と労働条件通知書が届いたら、事業所区分・所定労働時間・雇用期間の見込みを読み取り、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入要件を自動で判定し、取得届の下書きまで作る」という流れを一度設計しておけば、入社のたびに人が最初から判定する必要がなくなります。
📚 用語解説
Claude Code/Codex:Claude CodeはAnthropic社、CodexはOpenAI社が提供するAIエージェント。質問に答えるだけでなく、ファイルの読み込み、データの集計・突合、判定、文書の作成といった作業そのものを実行できる。AI社員AIKATAでは、この種のAIを使って事務所の事務作業を受託している。
6-2. 事務所の作業を、AIが担う作業へ置き換える
| これまで職員がやっていた作業 | AIに任せた後 |
|---|---|
| 入社連絡のメールや通知書を見て、入社日・所定労働時間を判定表に転記 | 連絡の内容を読み取り、判定に必要な項目を自動で整理 |
| 顧問先ごとの試用期間の長さ・適用区分を、毎回思い出して確認 | 顧問先ごとのルールを仕組みに登録して、毎回自動で当てはめる |
| 健保・厚年は5日以内、雇用保険は翌月10日までと、期限を個別に管理 | 入社日から期限を自動で計算し、期限の近い順に一覧化 |
| 試用期間明けの昇給を見落とし、随時改定の確認が遅れる | 試用期間の終了日を管理し、昇給月から3か月後の確認時期を事前に通知 |
| 遡及が必要になった顧問先の過去月の報酬を、手作業で集めて再計算 | 給与データを読み込み、月ごとの報酬と保険料の試算を自動で作成 |
6-3. 社労士法との線引き:提出は先生方、AIは前段の事務作業
資格取得届などの行政機関への提出手続きの代行と、帳簿書類の作成(社労士法上の1号・2号業務)は、先生方が行う業務として変わりません。AIが担うのは、その前段にある入社連絡の読み取り、加入要件の判定、期限の整理、下書き資料の作成といった事務作業です。AIの処理結果は人が品質チェックし、届出内容の最終確認と提出の判断・実行は、必ず事務所側に残ります。
07 BUILD OR DELEGATE 増員・外注・自作では、繁忙期の入社手続きは片づかない 4つの選択肢のうち3つは、事務所の悩みを別の悩みに置き換えるだけ
入社手続きの確認が重いという事務所が取りうる選択肢は、大きく4つあります。このうち3つは、事務所の悩みを別の悩みに置き換えるだけで終わります。
| 選択肢 | よくある期待 | 実際に行き詰まる所 | 判定 |
|---|---|---|---|
| ①職員を増やす | 人が増えれば入社手続きも追いつく | 4月の入社集中期に合わせて採用すると、閑散期にも人件費が残る。教育にも時間がかかり、属人化も増える | ❌ |
| ②従来型の外注・BPO | 入社手続きを外に出せる | 顧問先ごとの試用期間の運用や適用区分を外注先に説明し、上がってきた結果の手直しが事務所に残る | ❌ |
| ③事務所でAIを自作する | AIツールを使えば自動化できる | 顧問先ごとのルールの言語化、判定の検証の型づくり、作った人しか直せない第二の属人化の壁がある | ❌ |
| ④AI社員AIKATAに任せる | 判定・集計・下書きまで丸ごと預けられる | (該当なし) | ✅ |
08 WHAT IS AIKATA AI社員AIKATAとは——事務所の事務作業を丸ごと受託するサービス 増員・外注・自作のどの壁にも引っかからない、4つめの選択肢
AI社員AIKATA(AI社員AIKATAを運営する弊社・株式会社GENAI)は、給与計算・勤怠の集計・入退社手続きの書類の下準備・算定基礎届や労働保険の年度更新の下準備・帳票の作成・顧問先への資料回収や一次対応など、職員がパソコンで行っている事務作業を、AIと人の二重体制で丸ごと受託する業務代行サービスです。試用期間の入社手続きで言えば、入社連絡の読み取りから加入要件の判定、期限の整理、取得届の下書き作成までが、受託の対象になります。
仕組みの構築・運用はAIKATAが行うため、事務所にAIの知識は不要です。無料相談は60分・オンライン(Google Meet)で、業務の棚卸しと、どこまで任せられるかの整理を行います。契約の義務はありません。全国対応で、NDAを締結し、給与・人事のデータの受け渡しと保管のルールは事務所の規程に合わせて決めます。料金は月額の定額制で、業務量が増えても料金は変わりません。
AIKATAを使う社労士事務所では、顧問先から届く入社連絡や労働条件通知書をもとに、AIが加入要件の判定と届出の下書きまでを作り、事務所が内容を確認して承認する、という形で運用しています。事務所の側では、判定の根拠が確認しやすくなり、期限の管理も一覧で見られるようになります。
09 COMPARISON & CONCLUSION 残る道は「作業そのものを任せる」だけ 手作業・ソフトの追加/乗り換え・AIKATA、3つを並べて比較する
| 手作業のまま | ソフトの追加・乗り換え | AIKATAに任せる | |
|---|---|---|---|
| 繁忙期の負荷 | ❌ 入社の集中期に職員の時間が足りなくなる | △ 届出の作成は楽になるが、判定と確認は残る | ✅ 件数が増えても人を増やさず対応 |
| 顧問先ごとのルール | △ 職員の頭の中にある | △ ソフトの設定で一部吸収 | ✅ 仕組みに登録し、担当者が変わっても残る |
| 顧問先への負担 | ✅ ソフト変更なし | ❌ ソフトの乗り換えを依頼する必要がある | ✅ いまのソフトのまま変更不要 |
| 職員の採用・教育 | ❌ 制度改正のたびに知識の更新が必要 | △ 操作研修は必要 | ✅ 事務所にAIの知識は不要 |
| 社労士法の線引き | ✅ 全部事務所が行うので明確 | ✅ 明確 | ✅ 1号・2号業務は事務所に残し、事務作業のみ受託 |
9-1. AI社員AIKATAが選ばれる5つの理由
増員・外注・自作・ソフトの乗り換えは、どれも事務所が人か仕組みを抱え続けることになります。作業を手放せる道は、AIKATAに任せることだけです。入社手続きの加入判定で仕組みを作れば、同じ考え方を、算定基礎届や被扶養者の届出、資格喪失の手続きといった他の定型業務にも広げていけます。
次の入社シーズンを、職員を増やさずに越える準備を始めませんか
入社手続きの加入判定は、算定基礎届・資格喪失の手続き・被扶養者の届出と地続きの事務作業です。
無料相談(60分・オンライン)では、いまの事務所の業務を棚卸しし、どの作業から任せられるかをその場で整理します。人を増やす・ソフトを替えると決める前に、一度お話しください。
職員を増やす・外注する・AIを自作する・ソフトを替える——どの道を選んでも、集計・入力・確認の作業か、それを回す人と仕組みが事務所に残り続けます。
AI社員AIKATAなら、いまお使いの給与ソフト・手続きソフトはそのまま、顧問先ごとのルールも登録して処理し、事務所に残るのは仕上がりの確認と承認だけです。どの業務から任せられるかは、無料相談(60分・オンライン)でその場で整理します。
NEXT STEP
事務所の定型業務を、
AI社員に任せてみませんか?
よくある質問
Q. 試用期間中でも社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させる必要がありますか?
A. 必要です。被保険者になるかどうかは、試用期間の有無ではなく、適用事業所に常用的に使用されているか、所定労働時間・日数が要件を満たすかで判断されます。試用期間中も賃金が支払われていれば使用関係が認められるため、要件を満たす従業員は入社日(使用開始日)から加入義務が生じます。
Q. 試用期間を2か月以内にすれば、社会保険に加入しなくてよいですか?
A. いいえ。適用除外になるのは、契約期間が2か月以内と定められた短期の有期雇用などで、本採用を前提とした試用期間とは別の扱いです。契約書上の期間を短く書いても、実態として引き続き使用される見込みがある場合は、使用開始時から被保険者になります。
Q. 試用期間中に退職した場合も、資格取得届は必要ですか?
A. 要件を満たしていた場合は必要です。入社日付で資格取得届を提出し、退職したら退職日の翌日付で資格喪失届を提出します。「すぐに辞めたから届出は不要」とはなりません。入社から14日以内の退職でも、加入の手続きを省略してよいわけではない点に注意してください。
Q. 雇用保険は試用期間中でも加入しますか?
A. 週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがあれば、試用期間の初日から加入対象になります(昼間学生など一部は対象外)。本採用を前提とした採用であれば、試用期間も含めて雇用の見込みを判断します。なお、厚生労働省の資料によれば、令和10年(2028年)10月1日から、週所定労働時間の要件が10時間以上に引き下げられる予定です。
Q. 試用期間中の労災保険は使えますか?
A. 使えます。労災保険には被保険者という考え方がなく、正社員・パート・アルバイト・試用期間中の人を問わず、働いて賃金を受ける人は対象です。会社が手続きに協力しない場合でも、労働者は労働基準監督署に直接請求できます。
Q. 社会保険に未加入のまま試用期間を過ごした場合、どうなりますか?
A. 発覚すると、加入すべきだった時点にさかのぼって資格を取得する扱い(遡及適用)になり、原則として最大2年分の保険料が徴収されます。事業主負担分に加え、従業員負担分も事業主がまとめて納める形になり、延滞金が加算されることもあります。悪質な場合は、事業主に6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される規定もあります。
Q. 社労士法上、入社手続きの加入判定をAIに任せても問題ありませんか?
A. 資格取得届などの作成・提出代行は、社労士法上の1号・2号業務であり、先生方が行う業務として変わりません。AI社員AIKATAのようなサービスに任せる場合も、AIが担うのは入社連絡の読み取り、加入要件の判定、期限の整理、下書きの作成までの事務作業で、届出内容の最終確認と提出の判断・実行は、常に事務所側が行います。
Q. 今使っている給与ソフトや社労士向けクラウドのままでAI社員AIKATAを利用できますか?
A. 利用できます。AI社員AIKATAは特定のソフトに限定せず、いま事務所が使っている給与ソフトや社労士向けクラウド、勤怠システムをそのまま使い、画面操作を含めて自動化する仕組みです。顧問先にソフトの乗り換えを依頼する必要はなく、試用期間の運用や適用区分といった顧問先ごとの個別ルールを登録して処理します。
あわせて読みたい:同じテーマの記事
AI社員AIKATAへのお問い合わせ
この記事を読んで気になった方へ。
専門スタッフが、御社に最適な
業務自動化・業務代行プランを無料でご提案します。



